Hart's War
2002年 アメリカ 125分
監督:グレゴリー・ホブリット
第二次大戦末期。アメリカ軍の黒人航空兵リンカーン・スコット少尉は撃墜されてドイツ軍の捕虜となり、アウグスブルク郊外の収容所へ送られる。だが将校であるにもかかわらず下士官用の兵舎をあてがわれ、兵舎では人種差別主義の軍曹の露骨な不服従にあい、しかもその軍曹が殺されたことで犯人とみなされることになる。捕虜収容所の中で米軍の軍法会議が開かれるが、それはすでに判決が定まった茶番の裁判であり、証人は平然と嘘をつき、議長は人種偏見を隠そうともしない。だがスコット少尉は勇気を忘れずに黒人である誇りを熱く語るのであった。
つまり本当にそういう話で、その上に脱走の準備もするし実行もするし、破壊工作までしてしまうのである。どれかに絞り込むべきであった。話はまとまらない、人物造形はまとまらない、結局なにをしたかったのかよく分からないまま、やっと終わったという感じである。ちなみにスコット少尉の弁護士がコリン・ファレルで指揮官がブルース・ウィリス。コリン・ファレルは頑張っていたけれど人物設定が浅薄なので熱演が割にあわないし、キャラクターのない役を演じるブルース・ウィリスというのは見ていて本当に痛々しい。ドイツ軍側の指揮官がイェール大学出身でコリン・ファレルの先輩という設定になっていて、米軍の軍法会議便覧でもなんでも用意するぞと持ちかけてきたあたりで面白くなるかなと期待したけれど、大きくはずされたのであった。そのまま法廷コメディにしていればキャスティングも状況設定もすごく生きたと思うので残念でならない。
ちなみに捕虜収容所内の軍法会議物というと『銃殺!ナチスの長い五日間』というイタリア・ユーゴスラビア合作の怪作があって、これが意外な拾い物であったと記憶している。
Tetsuya Sato