Soft Beds, Hard Battles
1974年 イギリス 95分
監督:ロイ・ボールティング
1940年のパリ。フランス陸軍のラトゥール将軍、イギリス陸軍情報部のロビンソン少佐、アメリカ大使館のアラン・キャシディはそれぞれにマダム・グルニエの娼館を訪れて夜を明かし、イギリス軍がダンケルクから撤退すると「イギリス軍がいなくなってせいせいした」と言いながらラトゥール将軍は娼館に戻り、その娼館は「愛されるドイツ軍」パリ軍政官のヴォン・グローティヤン将軍から早々と営業許可を受け取って客を迎え、客として現われたドイツ軍の将軍を民間人の姿で舞い戻ったロビンソン少佐が射殺する。ロビンソン少佐は後片付けもしないで立ち去ってしまうので、死体は娼館の女たちとアメリカ大使館職員が適当に片づけ、そうすると本当にきれいに片づいてしまうので、イギリス陸軍及びフランス亡命政府はこの方法を有効と認めてマダム・グルニエを名誉大佐に任命し、娼館は娼婦ともどもそのまま「軍事化」され、以降、第二次世界大戦はこの娼館を中心に進行していくことになる。
ピーター・セラーズがラトゥール将軍、ロビンソン少佐(その調子)、パリのゲシュタポ指揮官シュローダー氏(わたしだ)、アドルフ・ヒトラー(パリは燃えているか)、フランス共和国大統領、さらにノルマンディ上陸作戦を視察中の大日本帝国皇太子京都殿下(わたしは神の遠縁だから)の六役を演じ、そのそれぞれがなんというのか、実に様になっている。映画そのものは決して上手な作りではないし、脚本もアイデア倒れの気配があるが、ピーター・セラーズの芸達者ぶりと、ポーカーフェースに貼り付いた酷薄な笑いが楽しくて、結局、最後まで笑いながら見てしまう。
Tetsuya Sato