2013年9月21日土曜日

エリジウム

エリジウム
Elysium
2013年 アメリカ 109分
監督:ニール・ブロムカンプ

22世紀中葉、人口爆発と大気汚染で地球が荒廃したので富裕層は衛星軌道上に建築されたコロニー、エリジウムに移住して地上に残った貧困階層を劣悪な労働条件で働かせていて、労働者の一人マックス・ダ・コスタは仕事上の事故で被曝して残り五日の命になり、助かるためにはどうしてもエリジウムにいかなければならないということで富裕階級の脳からデータを盗み取る危険な仕事をスパイダーから請け負うが、盗み取ったデータがエリジウムの根幹を揺るがす性格のものであったことから執拗に追われるはめになり、捕えられてエリジウムへ送られたところで立ち上がる。 
魅力的な場面はたくさんあるし、ジョディー・フォスター、ウィリアム・フィクトナー、シャールト・コプリーの悪役ぶりもそれぞれに魅力的だし、マット・デイモンもまじめに仕事をしているし、全体として見れば確実に水準はクリアしているものの、たいへん残念なことに仕上がりは『第9地区』に及ばない。格差にかかわる要素があまりにもすっきりと分割されているところがどうにも単純すぎるし、肝心なところに一度も踏み込まないまま都合のいい出口がついたプロットを追ってそのまま終了、という構成にどうにも煮え切らないものを感じていた。150年後のスラム化したロサンゼルスが現代のメキシコのスラムそのまんま、というのも解釈の中断があるような気がしてならない。そのまんま、ということであればティファナを舞台に近未来をやった『マインド・シューター』のほうがよほどにカラフルで真実味を帯びているし、ヨハネスブルグの都市部でロケをした『ジャッジ・ドレッド』は都市型のスラムをきっちりと扱っている。ニール・ブロムカンプという作家にはもっと過激な展開を期待していた。ハリウッド・メジャー直下のプロダクションと相性がよくないのではあるまいか。
Tetsuya Sato