2013年9月16日月曜日

ベルリン陥落

ベルリン陥落
Padenie Berlina
1949年 ソ連 152分
監督:ミハイル・チアウレリ

製鉄工のアリョーシャはノルマを超過達成して労働英雄となり、その功績を賞賛した女教師ナターシャに恋をするが、マヤコフスキーは知っていてもプーシキンがわからないので告白する勇気が得られずにいる。しかしスターリンに励まされてついに小麦畑で告白するとナターシャもまた自らの愛を告白し、相思相愛の仲となったところへドイツ軍がやってきて爆撃を始め、アリョーシャは負傷して昏倒する。三ヶ月後に目覚めるとナターシャは捕虜となってベルリンへ送られ、ドイツ軍はモスクワに迫っている。そこでアリョーシャは兵士となってモスクワ攻防戦を戦い、スターリンは早くも軍事的天才を発揮し、一方、ヒトラーの幕僚は早くも敗北主義の虜となっている。そしていきなりヤルタで会談が開かれ、戦後処理が決定されて、ここまでが第一部。第二部でソ連軍はオーデル川を渡河し、アリョーシャの部隊はベルリン近郊に達してナターシャのいる収容所を解放するが、ナターシャが唐突に失神したせいでここでは二人は再会しない。ソ連軍は包囲網を完成させてベルリン攻防戦が始まり、地下壕ではヒトラーがエヴァ・ブラウンと結婚し、見捨てられたベルリン市民は呪詛を叫び、アリョーシャと兵士たちは国会議事堂にソ連国旗を立てて戦闘は終わる。すると空から飛行機に乗ってスターリンが現われ、飛行場では各国の国旗を掲げた兵士市民が歓呼して迎え、アリョーシャはナターシャと再会を果たし、ナターシャはスターリンに接吻を捧げ、スターリンが演説する。
大戦直後に製作された超大作で、アグファを使ったカラー作品である。ちなみに音楽は国家によって大衆に迎合するように強要されたショスタコヴィッチ。スターリン、ジューコフ、ヒトラー、ゲッペルス、ゲーリングなどのそっくりさんが大挙して登場しておおげさな演技で学芸会のような芝居をやっており、特にヒトラーは完全に小心者として描かれていて、そのあたふたぶりはそれなりに笑える。
演出スタイルはサイレントに近く、モダンな映画としての文脈はない。たとえば『大地』のような社会主義的泥臭さを徹底的にひきずっている。しかしそういうスタイルを見るつもりで見ていれば、見るに耐えないというわけでもない。ただ、当然ながらプロパガンダ映画だし、しかも正体はプロパガンダの名を借りた個人崇拝である(スターリンが重々しくアップになったりすると、なぜか笑える)。
戦場の場面ではT-34やカチューシャなどの実車が大量に登場するものの、オーデル川の戦闘を除くと意外なことにミニチュアによる特撮が目立つ。モスクワ攻防戦での空戦シーンはワイヤー張りまくりだし、ベルリン空爆のシーンはかなり大きなオープンセットを作ってミニチュアを爆発させていたが、特にこの空爆シーンは短いながらも迫力があった。ソ連映画としては特撮ショットが非常に多いし、しかもそれがおおむね成功しているという点では珍しい映画なのではないだろうか。攻防戦に入ってからのベルリンのシーン(たとえば国会議事堂)をどこで撮ったのか、というのが気になるが、内部はセットだったとしても、外部はもしかしたら大戦直後にまんまの状態での現地ロケだったのだろうか? などと考えたりしていると、同じような国策大味映画であっても『ヨーロッパの解放』よりだいぶ面白い。


Tetsuya Sato