S6-E21
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罪
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衝動に負けて罪を犯した男が穢れを受けて町を追われた。頼れる者がなかったので荒れ野に逃れて虫を食らい、花の蜜を舐めて生き延びた。しかし、ただ生き延びただけで町へ戻る算段はない。男は衝動に負けた自分を呪い、自分に与えられた運命を嘆いた。渇きをもたらす荒れ野にたたずんで、尽きることを知らない嘆きの言葉に身を浸した。すると目の前に一人の若者が現われた。ここはひとの心の荒野である、と若者は言った。わたしはここにいる、と若者は言った。これまでもいたし、これからもいる、と若者は言った。わたしはあなたからあなたの罪と穢れを取り除こう、と若者は言った。男は若者の前にひざまずき、若者は男の肩から罪と穢れを取り除いた。あなたの荷は下ろされた、と若者は言った。しかしあなたはわたしがあなたからあなたの罪と穢れを取り除いたことを誰かに告げようとしてはならない。そう言い残して若者は立ち去り、男は運命の軛から解かれて町へ帰った。町の人々は驚いた。罪と穢れからどのようにして逃れたのかを知りたがった。男は衝動に負けてすべてを告げ、罪と穢れを抱えた多くの者が若者を探して荒れ野へ進んだ。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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