S6-E19
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虻
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南の風に乗って虻の群れがやって来た。胴体がオレンジほどもある大きな虻が群れになってやって来て、羽音をかまびすしく立てながら、女たちの留め針のような大きな針を牛や馬に突き立てた。山を越え、野を下り、我が物顔で庭を飛び回って鶏を刺し、家の中に飛び込んで男を刺し、女を刺し、悲鳴を上げる子供を刺し、命乞いをする老人を刺した。この虻に刺されると、鶏も牛も馬も人間もたちまちのうちに姿が変わって世にもおぞましい怪物になった。虻の群れは風に乗って北へ飛び去り、あとに残された怪物たちは色とりどりの角や尾や触角を振り、空を見上げて涙を流した。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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