S6-E27
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悪魔
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取り柄のない村で生まれた若者が荒れ野へ出かけていくと、どこからか悪魔が現われて若者を言葉で誘惑した。すると若者は古い皮の袋の口を広げて、ここに入れと悪魔に言った。悪魔が袋に入ると若者は袋の口を固く縛った。袋から出られなくなったことに気がついて悪魔は言葉を使って脅したが、若者は悪魔の言葉におびえるかわりに袋を勢いよく振り上げて手近の岩に叩きつけた。何度も何度も叩きつけると袋の中の悪魔が根を上げた。言葉を連ねて助けてくれと懇願するので若者は皮の袋の口を開けた。悪魔はすぐさま逃げようとしたが、若者はすばやく手を伸ばして悪魔を捕え、少し残していけ、と言って悪魔の片足をねじ取った。悪魔は若者の手から逃れ、若者は悪魔の足を袋に入れた。若者は荒れ野から出て、町に戻る道の途中で袋を捨てた。袋の中では悪魔の足が暴れていた。町の人々がそれを見て、なぜ捨てるのか、と若者にたずねた。すると若者は捨てたばかりの袋を踏んでこのように言った。あなたがたも悪魔から担保を取ろうとしてはならない。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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