2015年7月23日木曜日

レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺

レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺
Viy
2014年 ロシア/ウクライナ/チェコ 111分
監督:オレッグ・ステプチェンコ

18世紀初頭、イギリス人の自称地理学者ジョナサン・グリーンは全財産を投じて製作した自動計測器付き馬車に乗って大陸へ旅立ち、カルパチア山脈のかなたで道に迷ってとあるコサックの村にたどり着くが、この村では一年ほど前、地主の娘パンノチカが湖畔で怪死し、事件の一部を目撃した娘ナストゥーシャは発狂、村の司祭は一切は魔物のしわざであると断定し、パンノチカの最後の言葉から旅の神学生ホマ・ブルートは地主の命令にしたがってパンノチカの遺体が安置された教会に閉じ込められ、それから三日三晩のあいだ祈りを捧げることになるが、その報酬として地主が用意した金貨千枚を預かった司祭は教会で起こったことについて口をつぐみ、それどころか魔物の恐怖を利用して村人を扇動し始めるので、地主はたまたま現われたジョナサン・グリーンに事件の解決を依頼する。 
ゴーゴリ『ヴィイ』のきわめてモダンな再映画化で、製作にウーヴェ・ボルがちょっと関わっているみたい。冒頭、主人公はカントリーハウスの一室で若い娘と同衾していて、その現場に踏み込んだ父親から逃れてそのまま冒険の旅に出発する。ちなみにその父親がチャールズ・ダンスで、娘の寝室に忍び足で現われて、不届き者を発見すると大喜びして召使いに「犬をけしかけろ」と命じるところがとても素敵。小さなコサックの村は陰謀まみれで、西欧で新興宗教立ち上げのノウハウを学んできたという司祭が悪の限りを尽くしている。というわけで話は18世紀的理性の勝利で終わるわけだけど、それはそれとして、という感じで、魔女の婆さんは神学生を抱えて空を飛ぶし、宴会の席では酔ったコサックが次から次へと怪物化するし、チョークで円を描いて身を守っているとヴィイが長大なまぶたを垂らして現われて、無数の目玉をあやつって居場所を言い当てる。映画としては雑な仕上がりだが、それなりに楽しい。キャラクターや雰囲気はとてもいいし、魔物の造形は半端ではなく恐ろしい。


Tetsuya Sato