S7-E04
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荒廃
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耕されていたはずの畑は荒れ野に戻り、ところどころにたたずむ木々はひどくねじれて、裸になった枝を地面に向かって突き立てていた。霞のような暗い影が土地を覆って色彩を潰し、生き物は光から見離されてあるべき輪郭を失っていた。こうなったのは、すべて隕石のせいだという。隕石が落ちたという場所には、いまでも近づくことができなかった。そこは濃密な瘴気に満たされていて、近づけば恐るべき幻影に取り囲まれて、果てのない悪夢に落ち込んで戻ることができなくなった。どうにか戻ったとしても正気を失い、善悪を見失い、憎しみを込めて世界をにらむ廃人になった。不気味な声でつぶやきながら背中を丸めて歩く廃人の群れが、いつも瘴気の縁をさまよっている。この荒れた土地のはずれの丘に登ると彼方にクレーターを見ることができた。地面が漏斗状にえぐり取られたその場所は、夜になると赤みを帯びた不思議な光で満たされた。見ていると空から何かが群れになって舞い降りてくる。化け物が蝙蝠のような翼を使って羽ばたいて、次々と地上に降り立つと不気味な声で鳴き交わした。風が吹くと腐臭が漂ってくる。化け物の声が耳に残る。闇がからだに染み込んでくる。目を閉じても、声が心に突き刺さる。誰もが穢れを感じて丘を下り、この荒れ果てた土地から逃げ出していく。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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