Faraon
1966年 ポーランド 140分
監督:イエジー・カワレロウィッチ
『尼僧ヨアンナ』のイエジー・カワレロウィッチによるエジプト史劇だから見たのではなく、ポーランド製のエジプト史劇だから見た、ということになると思う。で、結論から言えばポーランド製のエジプト史劇ではなく、イエジー・カワレロウィッチのエジプト史劇なのであった。
新王朝末期のエジプトを舞台に国家の窮乏、人民の悲惨、ラムセス13世と神官の対立、アッシリアの圧力、フェニキアの陰謀などを扱っていて、いわゆるハリウッド史劇に比べれば低予算だがエジプトで本当にロケをしていて、ルクソールの遺跡などがそのまま背景に使われている。エキストラもそれなりの人数が揃っている。カメラワークや叙述にきわめて作家的なスタイルがあったのは間違いない。特に語りの形式には緩急を捉えたリズムがあって、これに乗れればおそらくは最後まで関心を持って見ることができる。ただし役者は木偶の坊も同然である。歴史的な状況は引き出しに分類されてしまわれていて、必要に応じて引っ張り出されているだけのように見える。時間をかけている割りには人物関係が安直で、都合よく消えたり現われたりする。そして最大の難を言えば演出があまりにも60年代的で、つまり野暮ったい。
Tetsuya Sato