Der rote Baron
2008年 ドイツ/イギリス 129分
監督:ニコライ・ミュラーション
リヒトホーフェンがすでにエースパイロットの地位にある1916年から国家的な英雄に祭り上げられて戦死する1918年まで。
木製モノコック構造の継ぎ目もあざやかな無塗装のアルバトロスD.V.というのはなかなかに珍しいし、西部戦線を鳥瞰する映像や空戦のシーンなどはそれなりに迫力のあるものとなっているが、リヒトホーフェンにまつわる伝記的な事実をなぞりながらリヒトホーフェンの内面の葛藤を想像し、リヒトホーフェンの恋人とリヒトホーフェンとの関係についても紆余曲折を入れ、リヒトホーフェンの周辺にいたパイロットのそれぞれの運命にも目を配り、優秀なパイロットのなかにはユダヤ人多数がいたことに触れ、地上を這いずる哀れな歩兵の運命と戦争の悲惨にもいちおう言及し、つまりできもしないのにあれやこれやと欲張った結果であろうと予想しているが、地上のシーンがやたらと多い上に勝手な文脈で挿入される情緒的なカットがむやみと長くてまとまりが乏しい退屈な映画になっている。
Tetsuya Sato