The Mechanic
1972年 アメリカ 100分
監督:マイケル・ウィナー
組織の殺し屋アーサー・ビショップは標的の生活を観察し、標的の留守中に標的のアパートの部屋に侵入して標的のガスコンロにガス漏れを起こす仕掛けを仕込み、標的のティーバッグを睡眠薬入りにすり替え、標的の本棚から本を選んでその一冊に起爆剤となる薬品を仕込み、そうして部屋から忍び出ると向かいの建物の窓から標的を監視し、標的が標的のアパートの部屋に戻ってガスコンロを使ってお湯をわかし、お茶を飲んでベッドで寝入ると、ガス漏れが起こった時刻を見計らってスナイパーライフルで標的の本棚を狙撃し、爆発を起こして標的を焼き殺す、という、妙に手間のかかった殺し方をして、次の標的にはアーサー・ビショップの古くからの知り合いが選ばれ、この仕事を片付けているうちにその知り合いの息子スティーブ・マッケンナと知り合い、ガールフレンドが自殺をはかって失血死していく様子を平然と眺めることのできるこの若者をアーサー・ビショップはなぜか気に入って、また信頼できる右腕になると考えて自分の仕事の助手に使うようになり、いろいろと仕込んで一緒に次の標的を片付けるとアーサー・ビショップに組織からのお呼びがかかり、組織はスティーブ・マッケンナを使うことに難色を示し、アーサー・ビショップが問題ないと主張して新たな仕事を請け負うと、そのあいだにスティーブ・マッケンナはアーサー・ビショップを始末するという仕事を組織から受け、そのことに気づいたアーサー・ビショップは新たな仕事を片付けるためにスティーブ・マッケンナとともにナポリへ飛ぶ。
アーサー・ビショップがチャールズ・ブロンソン、どう見てもへらへらしているだけで、どうしたって信頼できるようには見えない若造がジャン=マイケル・ヴィンセント。アクションシーンなどにはいちおうの迫力があるものの、ブロンソンの部屋にヒエロニムス・ボスの『悦楽の園』がかかっていたり、それを見上げている当人は神経衰弱になっていたり、とキャラクターに妙なひねりが加わっているが、どうやら格別の意味はないようだし、後半に入ると状況が微妙に混乱してきて、それがうまく収拾されていない。職人監督マイケル・ウィナーが悪い、というよりも、これは脚本がそもそもまずいのであろう。
Tetsuya Sato