Brokeback Mountain
2005年 アメリカ 134分
監督:アン・リー
ワイオミングの山奥でヒツジ番をしている二人の若者(ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール)が恋仲になり、山を下り、それぞれに結婚し、子供を作り、家庭を営んでいくあいだも秘められた関係を守っていく。
話は1963年に始まり、ヒース・レジャー扮する一方の娘が結婚まで、タイムスパンは20年前後で終わりは80年代に入っている。
『ハルク』や後の『ライフ・オブ・パイ』と同様、演出のトーンに一貫性があり、手抜きのないこまやかさが見えるが、不自然なほどのウェザリングの乏しさがすでに序盤から気になった。主人公二人は長期間の野外生活を送っているにもかかわらず、シャツはぱりっとしたままだし、汚れてもいないし、ジャケットの襟もきれいなままだし、袖に染みひとつついていない。そしてよく見ると手はきれいなままだし、顔には無精ヒゲものびてこない。たしかにヒゲを剃っているシーンが一度挿入されているが、どこまでも清潔な感じ、というのが少々うそっぽい。そのせいか、どこか現実感が希薄で、見た目に咀嚼しやすいように作られているような気がしてならなかった。同じように男を消費する映画で、同じく山のなかで男どもが得体の知れないことを、というのであれば、ひねりが利いていた『ラビナス』の勝ちではあるまいか。
Tetsuya Sato