Von Richthofen and Brown
1971年 アメリカ 99分
監督:ロジャー・コーマン
撃墜王フォン・リヒトフォーフェンの初陣から戦死までを、インタビューの再録などを織り交ぜながらテンポよく描いている。
リヒトフォーフェンの宿敵としてカナダ人の戦闘機乗りブラウンを登場させ、英国軍がブラウンの近代的な合理主義に染まっていく様子も手際がよく描写されていて、戦闘行為から騎士道精神という飾りが剥がれ落ちて単なる殺し合いへ、当事者の意識の上で変質していく有様をうまく伝えている。空の戦場も殺し合いの場として明確に規定され、その殺し合いの場における英雄リヒトフォーフェンが私生活においても釣や狩りを好んで魚や獣や鳥を殺し、その延長線上で戦闘に参加していた、とする指摘はきわめてロジャー・コーマンらしいと思う。
作りに粗さがあるものの、プロットは最小限に押さえて戦闘シーンを充実させ、その戦闘シーンにはそれなりの迫力があり、真っ赤に塗られた三葉機フォッカーDr-1も飛び、加えて色とりどりの空中サーカスもなかなかに楽しい。
ただ空戦シーンの背景はどこまでいっても現代英国ののどかな田園風景で(地上の戦場が登場するのは一度だけ)、そのことにうっかり気を取られると、この連中はどこからやってきてここで何をしているのか、といったことが気になってくる。
Tetsuya Sato