2013年10月8日火曜日

レバノン

レバノン
Lebanon
2009年 イスラエル/フランス/レバノン/ドイツ 90分
監督:サミュエル・マオズ

1982年、レバノン内戦中のレバノン戦争で、無能な指揮官、文句の多い装填手、ひとの命を奪いたくない砲手、泣き虫の運転手の四人を乗せたイスラエル軍の戦車がレバノンに入り、歩兵部隊とともに市街地を進んでいくと、誰が間違えたのかシリア軍の占領地域内にもぐり込み、歩兵に見捨てられてしまうので単独で安全地帯への脱出を試みる。
ほぼ全編が戦車の内部だけ、外の様子はペリスコープ越しにしか見えない、という徹底した手法が採用されているが、結果からすれば、これはわざとらしいだけであろう。見ているうちになんとなく『キプール』を思い出していた。個人的な心象ばかりが前に出すぎて、ひとりよがりのようにしか見えないのである。それにしても登場するこの戦車の汚さはいったいどういうことなのか。イスラエル軍では戦車をあんな状態で使うのか。床には水がたまって不気味なゴミが浮かんでいるし、車室の壁も掃除をしたような痕跡がないし、なぜかそこら中がじとじと湿っているし、おまけになぜか袋いっぱいのクルトンを搭載していて、RPGの直撃を食らうとそのクルトンがはじけてあらゆる場所に、いかにもばっちい感じでへばりつくのである。演出に違いないが、度を越している。乗っている連中も訓練を受けているように見えなくて、誰の命令も聞かないし、ペリスコープで余計なものばかり見ているし、動かなくなると動かないと言って騒ぐだけだし、そうするとそのたびに外から歩兵の指揮官がやってきてなだめたり励ましたりするのである。これでは見捨てられて当然であろう。とりあえず構成上の破綻はないものの、格別おもしろいところはない。 

Tetsuya Sato