We Were Soldiers
2002年 アメリカ 138分
監督:ランダル・ウォレス
1965年のベトナム、イア・ドランでの三日間にわたる戦いを事実に基づいて描いているという。まず冒頭、フランス軍が例によってひどく厭世的に全滅し、それから10年後、フォート・ベニングで空輸騎兵の編成が始まる。訓練風景が淡々と描かれ、将校の妻たちの生活が素描され、編成の進行にしたがって若い将校とその年若い妻が基地に到着し、こどもが生まれ、ベトナムに派遣された軍事顧問団の断末魔の通信が兵士の手によって傍受される。やがて下された派遣部隊増強の決定に基づいてムーア中佐以下の第七騎兵連隊第一大隊もベトナムに送られ、尾根と乾いた川床の間の小さな平原で北ベトナム正規軍一個師団と対決する。
主演はメル・ギブソン、マデリーン・ストウ。空輸騎兵やミニガンなどが本格的に投入された最初の戦闘であり、同時にアメリカ軍と北ベトナム正規軍との間でおこなわれた最初の本格的な戦闘でもあるということだが、戦闘は第二次世界大戦とまったく同じ種類の歩兵戦で最後にはM16に着剣して突撃していた。ベトナム戦争を扱ったこれまでの映画との最大の違いは、北ベトナム軍の兵士を人間として描いているところである。指揮官が知的だったり、兵士が手帳に奥さんの写真をはさんでいたり、突撃に先立って顔に不安を浮かべたりするわけである。もしかしたら過去にも同様の描写をした映画があるのかもしれないが、少なくともメジャー作品ではほかの例をわたしは知らない。進歩したという言うべきなのだろうか? 全体をとおしてまじめな作りで戦闘シーンにも手抜きがない。概して好感が持てる映画だと思うのだが、不思議なことに画面上で何が起こっていようとも妙にしらけているのである。こちらの目にはこの戦争をバランスのよい悲劇に仕上げたいという作り手の悲壮なまでの決意ばかりが伝わってきて、そのせいで敵味方の兵士たちも銃後に残された妻たちも涙に濡れた手で作り出されたアニマトロニクスのように見えてきてしまう。おそらくバランスがわざわいになっているのであろう。公平な悲劇などというものはありえないからである。
Tetsuya Sato