鬼子来了
2000年 中国 140分
監督:ジャン・ウェン
1945年の中国。日本海軍の砲台が置かれた寒村に謎の訪問者が出現し、村人を脅して二つの麻袋を残していく。麻袋の中には日本兵と中国人の通訳が縛られていて、村人たちは謎の訪問者の脅しにしたがって数日の間この捕虜を預かることになる。日本兵は最初から興奮していて殺せとわめき、中国人の通訳はそれを殺さないでくれと訳して場をつくろい、村人の方ではとにかく生きて返さなければいけないということで親切にしてやることにするけれど、期限の日がやってきても引き取り手が現われない。どうにもできずに立ち往生しているうちに冬が終わり、捕虜を養う負担に耐え切れなくなった村人たちは処分を考え始める。なにしろ日本兵がひどく扱いにくくて、何かというと自殺を試みる割にはあきらめずに脱出を画策するし、わざわざ小麦を叩いて餃子を出してやっても「この経済犯め」と罵ったりするのである。だったら殺してしまえという話になって、西太后の首切り役人までが動員されてくるあたりの白髪三千丈ぶりはなかなかに笑えた。目につきやすい政治的なコードにいちゃもんをつけるよりは、とにかく何かリアルで人間的なドラマを作り出そうという誠実さと努力を認めるべきであろう。不運な人々が遭遇した喜劇と悲劇を描いて巧みを感じさせた。
Tetsuya Sato