2013年10月24日木曜日

プロフェシー

プロフェシー
The Mothman Prophecies
2002年 アメリカ 119分
監督:マーク・ぺリントン

ジョン・A・キールの同名のノンフィクションを題材に、まず時代背景を1960年代から2004年に変更し、次に2年ほどの時間経過を数日に短縮し、そしてもつれたまま放り出されたエピソードの山から要点だけを摘み上げて要領よくまとめている。ただし主軸は期待の超常現象よりも予言の方に移動していて、だからUFO目撃事例やUFO搭乗体験、キャトルミューティレーション、UFOマニアの大襲来などといったいかがわしい出来事はまったく登場しないし、モスマン(蛾男)も画面を一瞬横切るだけ。そういうものをじっくり見物したければ、たとえばシャマランの『サイン』あたりを見ろ、ということであろう。
リチャード・ギアが妻を失った新聞記者で、実はその妻が死の直前に怪しい物を目撃していて、妻がノートに書き残したその物の形状がウエストバージニア州ポイントプレザントの怪物目撃報告のスケッチと酷似している、ということで当人はワシントン・ポスト紙の花形記者であったが、大統領選の行方を追うという本来の仕事からふらふらと離れて田舎の町に腰を据え、地元の婦人警官とともに目撃証言をあさり始める。奇怪な光を見た者は目のまわりに火傷を負い、奇怪な声を聞いた者は偏頭痛に悩み、電話からは奇怪な声が流れて惨事を予告する。そしてそこへ死んだ筈の妻の姿がちらりほらりと現われるので、記者は激しく狼狽して右往左往することになる。泣いて苦しむほど激しく愛していたらしいのだけど、困ったことにこれが本筋とほとんど関係がない。それでも泣いて叫んでいるのはもともとの話がばらけた超常現象の集合体で、それだけでは話をつないでいくのが大変だからなのである。
クライマックスの大事件は原作と同じで橋の大崩落。リアルで丁寧な演出がFANTASY IIの精巧なミニチュア・ワークとうまく融合していて、この場面はたいそう見ごたえがある。よく考えるとおかしいところが多いし、ネタ殺しといえばネタ殺しのような気もするけれど、それなりのセンスできれいに作られた映画であった。 



Tetsuya Sato