Casa de mi Padre
2012年 アメリカ 84分
監督:マット・ピードモント
父親の牧場で牧童をしているアルマンド・アルヴァレスは父親からバカ扱いされ、一方父親の愛情を一身に受ける弟のラウルは都会から美女ソニアを連れて戻り、ラウルがソニアと結婚するつもりだと聞いてラウルを愛するアルマンド・アルヴァレスはソニアの動機に疑問を抱くが、ソニアはアルマンド・アルヴァレスにラウルの正体が麻薬の密売人であることを告げ、アルマンド・アルヴァレスがそのことでラウルを問い詰めると事実を認め(ただしメキシコでは売っていない、アメリカ人に売っているだけ)、ラウルが帰郷したのは地元で麻薬の密売を取り仕切るオンサから縄張りを奪うためであることがわかり、さらにソニアがオンサの姪で、オンサがソニアとの結婚を計画していたこともわかり、ラウルにソニアを奪われたオンサはラウルの配下を殺害し、アルマンド・アルヴァレスの前には地元の警察の署長とアメリカの麻薬取締局の捜査官が現われてラウルの行動を監視するように脅迫し、アルマンド・アルヴァレスがラウルにかかわる事実を告げると怒った父親はアルマンド・アルヴァレスを家から追い出し、ラウルとソニアの結婚式は自動火器で武装した集団の襲撃を受けて血の海になり、ソニアは一家に不幸を呼び込んだことを嘆いて死を決意するものの、そこへ現れたアルマンド・アルヴァレスに救われて愛を交わす関係になり、愛を交わして寝転んでいるところへオンサと警察署長が現われてアルマンド・アルヴァレスを殺してソニアを奪い、アルマンド・アルヴァレスの死体にコヨーテが襲いかかるとそこへ伝説の白いヤマネコが現われて戦いになり、するといきなり画面がとまって三日間かけて撮影した戦いの場面はコヨーテの調教に失敗したりコカインをなめたトラがスタッフを食ったりといったような理由で公開できないという撮影助手の長い言い訳がテロップで流れ、ともあれヤマネコに救われてよみがえったアルマンド・アルヴァレスは家に戻って父祖伝来のウィンチェスターを取り、ソニアを救うためにオンサの屋敷へ出かけていく。
製作・主演がウィル・フェレル、監督は『サタデー・ナイト・ライブ』出身のマット・ピードモント。アメリカ映画だけどダイアログはほぼ全編スペイン語で、だからウィル・フェレルもスペイン語を話している。
おそらく50年代の粗悪な西部劇か、その延長線上にあるメキシコ製のリソースをいじることを目的にしていて、その点で方向性は『グラインドハウス』に似通っていると言えなくもないが、たぶんこちらのほうがより悪趣味で、だから馬上のシーンのアップではいまどきないようなはりぼての馬が使われ、屋外シーンもわざとらしくセットを使って、しかもそのセットのホリゾントは継ぎ目がしっかりとずれている。サングラスをかけた男の顔がなぜかアップになるとそのサングラスに撮影クルーがしっかりと映り込んでいるし、車上のシーンももっぱら安さを強調したスクリーンプロセスで、しかも違う場面で同じフィルムが使われているので同じ車とすれ違う。加えて無意味なワイプ処理、無意味なスプリットスクリーン、乱暴なアップと悪夢のような場面の連続で、へたくそを真似るために相当に頭を絞ったのではあるまいか。とどめは伝説のヤマネコで、これがかなりみっともないアニマトロニクスで、それをわざわざジム・ヘンソンの工房に頼んでいるのには恐れ入った。
はっきり言ってあまりほめる気にはなれないが、かなりのおばか映画で、その点に関する限りこれはけっこうツボであった。
Tetsuya Sato