2013年7月2日火曜日

マチェーテ

マチェーテ
Machete
2010年 アメリカ 105分
監督:ロバート・ロドリゲス、イーサン・マニキス

メキシコの捜査官、通称マチェーテは麻薬王トーレスにさらわれた娘を救うためにトーレスの拠点に殴り込み、マチェーテを抜いて悪党どもを端から刻んでさらわれた娘を救い出すが、そこで卑劣なだまし討ちにあって捕虜なり、家族を殺され、火をかけられ、それから数年後、不法就労者となってテキサスのメキシコ国境周辺をうろうろしているうちに州議会の上院議員暗殺の話を持ちかけられて脅されて引き受けることになり、指定された暗殺の場所へ出かけてみると、そこで卑劣なだまし討ちにあって今度は警察に追われるはめになるので、おれをはめたやつを許さない、という例によって例のごとき文脈で暴れ始めると、メキシコ人移民弾圧をたくらむ州議会の上院議員、麻薬取引を裏稼業にしているその腹心、国境で人間狩りをしている愛国的な自警団一味、麻薬王、入国税関管理局の美人捜査官、メキシコ人移民の抵抗組織の美人リーダーなどがわらわらと現われて激しくからみ、血糊が飛び散り、臓器がはみ出し、四方八方から弾丸が飛ぶ。
『グラインドハウス』のフェイク予告編をもとに作られた「本編」である。起点になった『グラインドハウス』と同様に70年代B級映画のフレームを使い、出来の悪い映画にありがちな間抜けな部分をわざとらしく悪用してなければならないはずの説明を省き、本来ならばあったはずのへたくそな部分やもどかしい部分はばっさりと切り捨てておいしいところだけを磨き上げ、頭を使っておばかな場面とおばかな決め台詞を山盛りにしておいしい映画に仕上げている。ほとんど同じようなことをやっていても頭を使わずに作られた『エクスペンダブルズ』とは対照的なことになっていて、つまり『エクスペンダブルズ』は見ているあいだに二度ばかり寝てもまったく悔いることがなかったが、こちらは最後まで目をらんらんと輝かせて鑑賞し、寝ている暇など一度もなかった。ダニー・トレホはあの一種異様な風貌で無敵のヒーローに神話的な説得力を与えている。ロバート・デニーロはテキサスの三流政治家をうれしそうに演じて分相応の最期を遂げ、スティーヴン・セガールは悪い麻薬王をうれしそうに演じて、最後は柄を抜いた日本刀の二刀流でマチェーテの二刀流と対決する。いずれも目の保養となる女優陣もきっちりと作られたキャラクターをそれぞれうれしそうに演じていて、その場その場でスポットがきっちりとあたるところがまたうれしい。作っているひとも出ているひとも見ているひともみなうれしい、ということで、これはたいそう楽しかった。

Tetsuya Sato