Salt
2010年 アメリカ 100分
監督:フィリップ・ノイス
CIAのロシア担当部員イヴリン・ソルトは北朝鮮で捕虜になって拷問を受け、恋人の活動で解放されると恋人と結婚し、それから二年後、結婚記念日にロシアからの亡命者が現われて、尋問するイヴリン・ソルトの前でソ連時代には特殊な訓練をするスパイ学校があったと語り、そこで訓練を受けたスパイはアメリカ人に偽装してアメリカへ渡り、スリーパーとして市民にまぎれて作戦開始を待っていると説明し、実はあのリー・ハーヴェイ・オズワルドもその一人で、目の前にいるイヴリン・ソルトもその一人で、イヴリン・ソルトの任務は訪米中のロシア大統領を暗殺することにあると言い始めるので、防諜部門はイヴリン・ソルトに嫌疑を抱き、イヴリン・ソルトは夫が事件に巻き込まれるのを恐れてその場から逃れ、帰宅すると夫は不在で、拉致されたような痕跡があり、自宅にも表れた防諜部門の追跡の手を逃れてニューヨークに移動し、外見を変えて警備陣を突破し、ロシア大統領に襲いかかり、クモの毒を使ってロシア大統領を麻痺させるといったいどこの誰が診断したのか、ロシア大統領の死亡が確認されてロシア国内に反米の機運が持ち上がり、逮捕されて警官の手から逃れたイヴリン・ソルトはかつての仲間の前に現われ、仲間が夫を殺害するとそこにいた仲間を残らず殺害し、計画にしたがってNATOの連絡員に変装してホワイトハウスに現われると騒ぎが起こって大統領は護衛とともに地下へ逃れ、大統領はすべてがロシアの攻撃であると信じて核兵器を使う準備に取りかかり、するとそれまでおとなしい顔をしていたイヴリン・ソルトの上司がまわりの全員を殺して大統領を殴り倒し、核兵器の照準をテヘランとメッカにあわせて世界を大混乱に陥れようとしていると、そこへイヴリン・ソルトが現われて上司と戦い、核兵器のカウントダウンを中止して逮捕され、自分から夫を奪った連中を皆殺しにすると宣言して護送のヘリコプターから冬のポトマック川へ逃走する。
ニコライ・タルコフスキー(タルコフスキー!?)、と正体を名乗るCIAの上司がリーヴ・シュレイバー。冒頭、CIAの「国内支局」が石油会社に隠蔽されているところで実はすでに引いていた。頻繁に挿入される回想シーンが不安を高め、不安を確信に変えながら単調なアクションシーンを眺めて退屈した。ある意味きわめてカート・ウィマーらしいカート・ウィマーの脚本が幼稚。いっそ60年代を舞台にして、たとえばロバート・ロドリゲスが『マチェーテ』でやったように頭の悪いふりをする、といった趣向でやったほうがまだよかったのではあるまいか。いまさら真面目に作るような内容ではない。場面がきっちりと色を帯びているところはさすがにフィリップ・ノイスの作品だが、演出はあきらかにやる気がないし、アンジェリーナ・ジョリーも勝手に感極まっているだけでいいところがまるでない。スリーパーの頭目の役でダニエル・オルブリフスキーが登場する。
Tetsuya Sato