2013年7月17日水曜日

96時間

96時間
Taken
2008年  フランス 93分
監督:ピエール・モレル

CIAの工作員であったブライアン・ミルズは仕事で家庭を崩壊させたことを反省し、金持ちと再婚した妻と娘の近くに住んで娘の幸福を見守っている。ところが17歳の誕生日のあと、娘が友達と一緒にパリへ旅立ち、着いたその日に何者かに拉致されるので、いまにもさらわれそうな状況にある娘から得た情報と同じ電話から聞こえた犯人の声からすばやく一味を特定し、元妻の金持ちの再婚相手のプライベート・ジェットに乗り込んでパリへ飛び、娘を取り戻すためにまったく手段を選ばずに活動を始める。元工作員の技能を生かして情報を集め、敵を見つければ殴る、蹴るはあたりまえ、銃器で武装した群がる敵とほとんど徒手空拳で戦ってことごとくに勝ち、捕まえた敵には拷問を加えて情報を吐かせ、ついに人身売買組織の本陣を突き止めてそこでも死体の山を築き、もちろん、その合間にはフランス官憲ともタイマンを張るのである。
このナンセンスなほど無敵の父親もリーアム・ニーソンが人生の影を背負って重々しく演じることでリアルに見えてくるから恐ろしい。冒頭で手際よく人物の関係と性格を説明し、それが終わると状況を即座に切り替えて、そこから先はアクション・シーンの連続になるといういたってシンプルな構成だが、主人公が活動を始めてからのテンションの高さが半端ではない。アクション自体に格別の派手さはないものの、演出と編集がうまいのでどれもスリリングな場面に仕上がっている。適当に味付けを変えて単調にならないように考えているところも好ましい。ファムケ・ヤンセンもきれいに撮れてるし、アクション映画を作るという目的に対してまったくぶれのない点で、これは傑作なのである。 

Tetsuya Sato