Solyaris
1972年 ソ連 165分
監督:アンドレイ・タルコフスキー
レムの同名の原作に基づく。心理学者のクリスが小川の流れの中でたゆたう水草の群れを切りも際限もなく見つめていた頃、宇宙の彼方では惑星ソラリスの探査計画が失敗の危機にさらされていた。そこでクリスは状況打開の要員としてソラリスの観測ステーションへ派遣されるが、その足元では知性を持っているとかいう例の海がただもう切りも際限もなくたゆたっている。そしてステーションの内部は荒廃し、研究組織は崩壊して、わずか二人が研究員が互いに孤立を保って留まっているだけだった。おまけにステーションの内部にはいない筈の人影があり、やがてクリスの前には自殺した妻ハリーが昔そのままの姿で出現する。もちろんそれは知性を有するソラリスの海が人間を試みるために送り込んできた幻影であったが、立派に実体を備えていたのでクリスはこの幻影のハリーに激しく心を動かされるのである。
何度見ても無用に長いシーンがあるように思えてならないが、水に対する独特の美意識と湿度を強調とした対象との距離感、きわめて限定的ではあるものの印象的な特殊効果、よくできた美術などがあいまって実に不可思議な映画に仕上がっている。
Tetsuya Sato