Mclintock!
1963年 アメリカ 127分
監督:アンドリュー・V・マクラグレン
大地主で大牧場主で近隣の水利権を押さえ、鉱山と製材所を持つ大金持ちで、町にもその名がついている男マクリントックの妻キャサリンが二年ぶりに町に現われ、亭主に向かって喧嘩を売る。そのあいだにマクリントックの周囲では次から次へと事件が起こり、農民は政府の甘言に釣られて痩せた土地に入植し、その入植者たちは地元のコマンチとトラブルを起こし、それをいさめにいった町の男たちと入植者のあいだでもトラブルが起こり、マクリントックの娘には気に入らない大学出の小僧がへばりつき、政府任命の知事はマクリントックの女房にしきりと粉をかけ、その女房はマクリントックが料理女とできていると疑っている。
マクリントックがジョン・ウェイン、キャサリンがモーリン・オハラ。良心的に作られたコメディ仕立ての明るい西部劇で、ジョン・ウェインは全編をとおして空砲を一発撃つだけで、誰も死なない。演出のテンポは速く、ちょっと間の抜けた会話は気が利いており、ロデオ大会などの見どころもある。登場人物には主役から脇役まできっちりとわかりやすいキャラクターが割り振られ、よどみもなにもないので最後まで安心して見ていられる。とはいえ、ここで約束となっている古典的なモラルでは個人はおおむねにおいて常に正しく、そして政府の役人は無能者ばかりということになっていて、このほとんど反国家的な自主独立の精神は最近のアメリカ映画にはまず見受けられない種類のものであろう。同様に、言うことを聞かない女房は尻を叩いて折檻するという古めかしいコードもまた最近のアメリカ映画では絶対に見受けられない種類のものではあるまいか。
Tetsuya Sato