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ヒュンは王を追い出して王になった。光り輝く王冠をかぶり、王宮のテラスに立って演説した。
「俺は運命を受け入れている。俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
人々は新しい王に歓声を送った。詩人は王の勇気を讃え、新聞は新時代の到来を告げた。若者たちは王を真似て羽飾りがついた帽子をかぶり、腰に剣を吊るして町の広場に繰り出した。学校に戻るようにと言われると剣を抜いて斬りかかった。職場に戻るようにと言われると剣を抜いて斬りかかった。王もまた、羽飾りがついた帽子をかぶって町の広場に現われた。なぜ王が、と問う者に剣を抜いて斬りかかり、友達を作って友達のおごりで酒を飲んだ。酔っ払って城に戻るとクロエが怒り狂っていた。
「飲んだくれ」クロエが叫んだ。
ヒュンがクロエの頬を叩いた。
「ろくでなし」クロエが叫んだ。
ヒュンがクロエの頬を叩いた。
間もなく災厄が王国を襲った。
洪水で町が流され、地震で町が破壊され、季節はずれの暴風で穀倉地帯が壊滅した。ヒュンはすぐにすべての被災地を視察した。
洪水の爪跡を見てヒュンは言った。
「すげえ」
地震の爪跡を見てヒュンは言った。
「すげえ」
暴風の爪跡を見てヒュンは言った。
「すげえ」
人々の苦難を見てヒュンは言った。
「すげえ」
すげえ、と言うだけでまったく手を打とうとしないので、人々は王の正統性に疑問を抱いた。新聞は王を糾弾し、革命家たちは檄文をばらまき、人々は城の前で怒りの拳を振り上げた。王の首を求めて城の門に殺到した。
「いったい何が始まった?」
ヒュンがたずねると従僕が答えた。
「陛下、革命でございます」
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「俺は運命を受け入れている。俺は世界を救う英雄になる。だから俺は邪悪な黒い力と戦うんだ」
人々は新しい王に歓声を送った。詩人は王の勇気を讃え、新聞は新時代の到来を告げた。若者たちは王を真似て羽飾りがついた帽子をかぶり、腰に剣を吊るして町の広場に繰り出した。学校に戻るようにと言われると剣を抜いて斬りかかった。職場に戻るようにと言われると剣を抜いて斬りかかった。王もまた、羽飾りがついた帽子をかぶって町の広場に現われた。なぜ王が、と問う者に剣を抜いて斬りかかり、友達を作って友達のおごりで酒を飲んだ。酔っ払って城に戻るとクロエが怒り狂っていた。
「飲んだくれ」クロエが叫んだ。
ヒュンがクロエの頬を叩いた。
「ろくでなし」クロエが叫んだ。
ヒュンがクロエの頬を叩いた。
間もなく災厄が王国を襲った。
洪水で町が流され、地震で町が破壊され、季節はずれの暴風で穀倉地帯が壊滅した。ヒュンはすぐにすべての被災地を視察した。
洪水の爪跡を見てヒュンは言った。
「すげえ」
地震の爪跡を見てヒュンは言った。
「すげえ」
暴風の爪跡を見てヒュンは言った。
「すげえ」
人々の苦難を見てヒュンは言った。
「すげえ」
すげえ、と言うだけでまったく手を打とうとしないので、人々は王の正統性に疑問を抱いた。新聞は王を糾弾し、革命家たちは檄文をばらまき、人々は城の前で怒りの拳を振り上げた。王の首を求めて城の門に殺到した。
「いったい何が始まった?」
ヒュンがたずねると従僕が答えた。
「陛下、革命でございます」
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