(53)
|
邪悪な黒い力が南で勢いを増していた。黒い力に加担する多くの者が、チュンの失敗を見て学び、ミュンの失敗を見て学び、ギュンの失敗を見て学んだ。そして前よりも強く、賢くなった。結束を固めるために教義を生み出して構成員の心に勇気を吹き込み、残酷な掟を定めて裏切り者を警戒した。二流どころの顔ぶれでは政府の特殊部隊に対処できないことがわかったので、政府や軍の特殊部隊から兵士を募って自前の軍隊を強くした。最新鋭の武器をそろえ、最新鋭の魔法玉もそろえ、強力になった軍隊を各地に派遣して強引にビジネスを推し進めた。粗悪な魔法玉を売りさばき、職にあぶれた若者を軍隊に取り込み、企業や商店を脅してみかじめを取り、生活物資の流通を仕切り、金融に乗り出し、メディアを支配し、ときには学校を作り、病院を作り、恵まれない人々に愛の手を差し出し、警察や軍隊が出動すると圧倒的な攻撃力で撃退した。一つの地域を制圧すると隣の地域に触手を伸ばして、そこも制圧するとまた隣へと邪悪な黒い力のフランチャイズを展開して、競合する勢力に遭遇すると縄張りを争って戦争を始めた。
邪悪な黒い力が迫っている、と予言者は言った。千年にわたる平和と繁栄は突き崩され、偉大なる王国は滅びの道を歩み始める、と予言者は言った。苦難の時代がやって来る、と予言者は言った。災いが大地を覆い尽くす、と予言者は言った。邪悪な黒い力がおまえたちの土地を奪い、邪悪な黒い力がおまえたちの土地を耕すであろう、と予言者は言った。予言者たちが道に並んで、声をそろえて終わりの始まりを叫んでいた。
「世界が終わる」
「終末に備えよ」
「この声を聞け」
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
邪悪な黒い力が迫っている、と予言者は言った。千年にわたる平和と繁栄は突き崩され、偉大なる王国は滅びの道を歩み始める、と予言者は言った。苦難の時代がやって来る、と予言者は言った。災いが大地を覆い尽くす、と予言者は言った。邪悪な黒い力がおまえたちの土地を奪い、邪悪な黒い力がおまえたちの土地を耕すであろう、と予言者は言った。予言者たちが道に並んで、声をそろえて終わりの始まりを叫んでいた。
「世界が終わる」
「終末に備えよ」
「この声を聞け」
Copyright c2015 Tetsuya Sato All rights reserved.