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「邪悪な黒い力よ」ネロエが叫んだ。「おまえたちの思うとおりにはさせません」
ネロエが呪文を唱え始めた。呪文を唱えながら手を動かすと用心棒の一人が消滅した。消えた男がいた場所にはパジャマ姿の男が歯ブラシを握って立っていた。銃弾がパジャマ姿の男を蜂の巣にした。ネロエがもう一度手を動かすと別の用心棒が消滅した。消えた男がいた場所には夜会服を着た男がグラスを手にして立っていた。銃弾が夜会服の男を蜂の巣にした。ネロエがまた手を動かすとまた一人の用心棒が消滅した。消えた男がいた場所にはエプロン姿の女がレタスを持って立っていた。銃弾がエプロン姿の女を蜂の巣にした。ネロエが手を動かすたびに用心棒が消えていった。入れ替わりに善良な市民が現われて、ただうろたえたまま、逃げる間もなく蜂の巣にされた。しかしネロエが手を動かして居場所の交換を続けると飛び交う弾の数が減っていった。用心棒が一人また一人と消えていって、善良な市民に入れ替わった。銃声がやみ、わずかに残った用心棒は路地裏の闇に姿を隠し、着の身着のままで見知らぬ場所に投げ出された人々は足もとに転がる無数の死体に気がついて、ただうろたえたまま、喉が破れるまで悲鳴を上げた。ヒュンがネロエの横に立った。
「ここは清浄になりました」とネロエが言った。
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ネロエが呪文を唱え始めた。呪文を唱えながら手を動かすと用心棒の一人が消滅した。消えた男がいた場所にはパジャマ姿の男が歯ブラシを握って立っていた。銃弾がパジャマ姿の男を蜂の巣にした。ネロエがもう一度手を動かすと別の用心棒が消滅した。消えた男がいた場所には夜会服を着た男がグラスを手にして立っていた。銃弾が夜会服の男を蜂の巣にした。ネロエがまた手を動かすとまた一人の用心棒が消滅した。消えた男がいた場所にはエプロン姿の女がレタスを持って立っていた。銃弾がエプロン姿の女を蜂の巣にした。ネロエが手を動かすたびに用心棒が消えていった。入れ替わりに善良な市民が現われて、ただうろたえたまま、逃げる間もなく蜂の巣にされた。しかしネロエが手を動かして居場所の交換を続けると飛び交う弾の数が減っていった。用心棒が一人また一人と消えていって、善良な市民に入れ替わった。銃声がやみ、わずかに残った用心棒は路地裏の闇に姿を隠し、着の身着のままで見知らぬ場所に投げ出された人々は足もとに転がる無数の死体に気がついて、ただうろたえたまま、喉が破れるまで悲鳴を上げた。ヒュンがネロエの横に立った。
「ここは清浄になりました」とネロエが言った。
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