S7-E08
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召喚
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垂れ込めた黒雲から風が吹きつけ、玉の雨が島を洗った。風に吹かれ、雨粒に打たれて木々がたわみ、島を囲む海が白く泡立った。雷鳴が轟き、稲妻が空を裂いて廃墟を青く照らし出した。石積みの壁が雨に濡れている。かろうじて残った屋根の下に人影が見える。ローブをまとい、奇怪な杖を捧げ持ったいくつかの影が、風に向かって呪文を叫び続けていた。雲を破って、暗い何かが舞い降りてくる。暗黒の尾を引いて悪夢が近づいてくる。膿胞にまみれた化け物が地上に達して翼を広げ、痛みに喘ぐようにからだを大きく震わせた。ローブをまとった人影が、ローブを捨ててひざまずいた。膿胞が破れて胎児のようなものが転がり出て、廃虚の床で産声を上げた。動き始める。跳ねるように進んで人影の一つに躍りかかる。吹き上がる血しぶきが絶叫とともに風に乗った。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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