2015年8月10日月曜日

Plan-B/ 信徒

S7-E12
信徒
 古ぼけたバスが騒がしく音を立てて町の広場に入ってきて、広場の隅に停まってドアを開けた。異様な雰囲気の男たちがからだを揺すりながら降りてきた。着ているものは様々だったが、誰もが帽子を目深にかぶり、大きなサングラスで目を隠して、ぐるぐると巻きつけたマフラーで顔の下半分を隠していた。一列になってよたよたと、町の目抜き通りを横切っていく。そろって扁平足なのか、歩く姿がどこかおかしい。誰もが同じように背中を丸めて歩くので、大量生産された安物に見える。そして報告のとおりなら、あのサングラスとマフラーの下には魚の顔があるはずだ。上着の襟の下には大きな鰓があるはずだ。信徒たちだよ。わたしの横で老人が言った。老人はその信徒たちに近づいて、腰をかがめて手を差し出した。信徒の一人ひとりが足を止めて、老人の手に小銭を置いていく。老人は小銭を受け取るたびに頭を下げて、信徒たちの健康を祈った。合図があった。わたしたちはピストルを出して、いっせいに信徒たちを取り囲んだ。棍棒を握った同僚が信徒の一人を殴りつけた。計画どおりに、すぐに護送車がやって来た。わたしたちは信徒たちをつかまえて、端から護送車に詰め込んだ。作戦は終わり、また一つ邪教の脅威が取り除かれた。なぜこんなことを、と老人が叫んだ。こんないいひとたちに、なぜこんなひどいことを。走り去る護送車に、老人は手を振りながら叫び続けた。どうか、どうか、あなたがたに神のご加護を。

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