Stalingrad
2013年 ロシア 131分
監督:フョードル・ボンダルチュク
2013年、東日本大震災の救援活動のために現地に到着したロシア人のグループはなぜかドイツ人ばかりが生き埋めになった建物を発見、内部にカメラを入れて生存者にドイツ語で話しかけると生存者が話を続けてほしいと頼むので、ロシア人は自分には五人の父親がいる、ということを言って1942年11月のスターリングラードにおける出来事を語り始め、ロシア軍がヴォルガ川を越えてドイツ軍燃料貯蔵庫に肉薄すると貯蔵庫の指揮官カーン大尉は燃料庫を爆破、噴き出た炎によって火だるまになったロシア兵は火だるまのままドイツ軍陣地に突入し、ドイツ軍は察するところ脅えて退却に移り、グルモフ大尉が率いる少数のロシア兵は河畔にあるアパートを占拠、そこに河川海軍水兵やその他の兵士なども加わり、対岸の師団司令部からそこを三日間確保しろという命令を受けるので各階に兵を配置しているとアパートのもともとの住人で家族を亡くしたあと、一人でなおも住み続けている少女カーチャを発見、兵士たちの気持ちはなんとなくこのカーチャを中心に動くようになり、一方、司令部に戻ったカーン大尉は明らかにそりの合わない上官からあれやこれやと叱責を受けてアパートの奪還を命令され、任務をなんとなく先送りにしながら地下へ下りて、そこで避難生活を強いられている市民のあいだを縫ってロシア人女性マーシャの部屋へ通っては食料を渡し、愚痴を言い、ロシア的野蛮さに取り込まれつつある自分を嘆き、そうしているととりあえずかき集めたとおぼしき一個小隊ほどが集まるので、それを指揮してアパートに突入、見事に反撃されるので再びマーシャとの親睦を深め、河畔のアパートではロシア兵たちがカーチャの誕生日を祝い、それぞれの思いを抱えていると、ドイツ軍が本腰を入れて攻め込んでくる。
というわけで市街戦というよりも寄せ集め部隊で拠点防御という内容で、監督はセルゲイ・ボンダルチュクの息子で『収容所惑星』などのフョードル・ボンダルチュク。ヴォルガ川河畔で十字を切っていた老兵はおそらくセルゲイ・ボンダルチュクであろう。かなり手間のかかった大作で、美術などは非常によくできているし、(東日本大震災は余計だとしても)脚本もそれなりにできているが、画面設計が微妙にまとまりを欠き、無用のハイスピード・ショットが目立つほか、白兵戦になるとほぼ『300』というのはいかがなものか。それでも戦闘シーンはそれなりに迫力があり、目の前にハインケル He 111が降ってくるし(爆撃中の機体を真上から捉えたショットがあり、翼面積の広さがよくわかる)、三号突撃砲(たぶん)も顔を出すし、ケッテンクラートもちゃんと走っている。細部にこだわった美術に助けられているような気がするが、この監督としてはかなりいい仕事をしていると思う。
Tetsuya Sato