S7-E14
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血
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昔むかし、海と空の向こうの国に十六人の王子を持つ王様がいた。腹違いの王子たちはいつもいがみ合って暮らしていて、しょっちゅう拳を握って殴り合い、ときにはその拳を王様にも振り上げたので、たまりかねた王様は庭にそそり立つ樫の大木に目をとめると、家来に命じて王子たちをまとめてその木に縛りつけた。この樫の木は人間の血の味を知っていて、それまでにも下男や下女をかどわかしては血をすすっていたが、栄養状態が良好で、しかも血の気の多い若者を一度に十六人も与えられたので、大喜びで夜になるのも待たずに王子たちの血を吸い始めた。王子たちはたちまちのうちに血の気を失っていったが、それでもいがみ合うのをやめようとしない。呆れた王様が見守っていると、すっかり血を吸い取られて、一人また一人と死んでいった。海と空の向こうの国にはいまでもまだ王様がいるが、王子は一人も残っていない。
Copyright ©2015 Tetsuya Sato All rights reserved.
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