Son of God
2014年 アメリカ 138分
監督:クリストファー・スペンサー
TVミニシリーズ『The Bible』の劇場用再編集版で、創世記から始まって福音書まで続く300分を2時間強に圧縮し、イチジクを食べるアダムとイブ、出エジプト、大洪水、ダヴィデとゴリアテなどは回想するヨハネの頭に一瞬だけ登場し、イエス生誕は早回しにされ、エジプトへの脱出は飛ばされ、荒野での40日もほぼ飛ばされ、洗礼者ヨハネはイエスの回想で一瞬だけ登場し、説教を始めたイエスが弟子を増やしながらエルサレムへ入るまでで前半、カヤパが政治的板挟みの状態でパリサイ人の正体をさらしながらイエスを陥れて磔刑に至るまでが後半という構成で、福音書素材の映画としては珍しいのは、まずマグダラのマリアが常に弟子の中にいること、カヤパがおもに政治家として描かれていること、ローマ兵の暴虐が具体的に描かれていること、ピラトがインテリではなくて武闘派として描かれていること、十字架の上のイエスがこと切れると神殿の幕が裂けるだけではなくて、エルサレム全体がほぼ震度5強の地震に襲われること、などであろう。イエスを演じたディオゴ・モルガドは少し垂れ目のモダンなイケメンで、この垂れ目が気がつくと垂れ目が気になってならなかったという点を除けば悪い仕事はしていない。弟子を中心に周辺人物はよく顔を選んであって、雰囲気でなんとなく識別できる、というのはおそらく伝統的な象徴表現におおむね忠実な描写がおこなわれているからであろう。いまどきの映像作品としてはCGがかなりしょぼい(おもにエルサレムの遠景)という問題があるものの、悪くはないと思う。オリジナルのほうを見てみたい。
Tetsuya Sato