2015年8月1日土曜日

ミニオンズ

ミニオンズ
Minions
2015年 アメリカ 95分
監督:ピエール・コフィン、カイル・バルダ

察するところ数億年前に発生して海中を漂いながら凶悪なボスを探していたミニオンたちは進化を遂げて上陸を果たし、以降、仕えるべき凶悪なボスを探し求めて人類とともに歴史を歩み、察するところモスクワ遠征に参加しているあいだに極北の地へたどり着いてそこで文明を発達させていくものの、そもそも凶悪なボスを求めるという存在理由から離れたせいでに二十世紀中葉を迎えて心理的な袋小路にもぐり込み、この鬱状態を打破するためにはなんとかして凶悪なボスとめぐり合う必要があると考えたケヴィンはスチュアート、ボブとともに長い旅に出てニューヨークに到達し、そこでオルランドで開かれる悪党大会ヴィラコンの存在を知ると悪事を家業とするネルソン一家の助けを得てフロリダに移動してヴィラコンに参加し、悪の女帝スカーレット・オーバーキルの子分となってイギリスに渡り、英国支配をたくらむスカーレット・オーバーキルの命令にしたがってエリザベス女王の宝冠をねらうが、エクスカリバーを引き抜いたボブが英国王の証を立てるので、スカーレット・オーバーキルの恨みを買う。 
ユニバーサルのロゴがミニオンの合唱とともに映し出され、現代世界に至るまでのミニオンの軌跡が小気味よくつながっていくところは掛け値なしに楽しいが、ケヴィンが決意をして旅に出るあたりから、そもそもアテンションスパンが短くて雑念が目立つこの生き物が、やはりアテンションスパンは短いし雑念も目立つものの、それでも一定の目的に沿って行動するというある種の矛盾が現われてきて、豊富に盛り込まれた小ネタとケヴィンを探してうろうろするミニオンの大集団がそれなりの盛り上がりを提供するにもかかわらず、ケヴィンたちの英雄的な行動がこのアテンションスパンが驚くほど短くて雑念が目立つ生き物の生態と微妙に一致しないという違和感を最後まで感じていた。勝手な話で恐縮だが、水準は十分にクリアしていても、こちらの過大な期待には残念ながら達していないということになる。スカーレット・オーバーキル(サンドラ・ブロックは声優を思い切り楽しんでいる)に集中するよりも、序盤の勢いを保ったまま、とにかく次から次へと勝手にボスを見つけてはボスを自滅させていくということで全体が構成されていればたいへんな傑作になったであろう。あと、個人的にはティムの問題がある。ボブはいつもティムという名前のぬいぐるみのクマを抱えていて、このクマがかなり危険な目に遭遇するので、見ているこちらは思わずボブに感情移入してティム、ティムと心の中で叫ぶことになる。このティムへの集中も、そもそもアテンションスパンが短くて驚くほど雑念が目立つこの生き物の性格とかみ合っていない(というか、本当に心配しなければならないので、ぬいぐるみのクマでサスペンスを盛り上げないでほしい)。 
Tetsuya Sato