2015年8月11日火曜日

Plan-B/ 探求

S7-E13
探究
 彼は若くして博学を誇り、大学に迎えられて隠秘学を修めるとその方面で並ぶ者のない業績を挙げたものの、禁断の魔道書に触れたことで道をはずし、研究に耽溺して大学教員としての義務を忘れ、同僚や上司に対して超然とふるまったために大学を追われ、場末の薄汚い部屋に逃れて市井の研究者となる道を選んだが、孤独な研究生活は当初のもくろみに反して彼に停滞と困窮をもたらし、とりわけ困窮ぶりは目に余るものがあったので、心配した友人の勧めにしたがって地方の小さな大学に職を求め、それでどうにか経済的な安定は得ても暗黒世界への渇望は一瞬たりともやむことはなく、大学の忌まわしい内情と同僚の忌まわしい俗物ぶりに悩まされながらもなお探求を続けようと試みて、ある日ついに発狂した。彼はすべてを捨てて山へ駆け込み、その後の行方は知る者はなかった。それから数年を経て、わたしは山岳地帯を徘徊して住民に脅威と恐怖を与える怪物の存在を知り、武装した仲間を連れて山に入った。山の中の危険な道を進んでいくと藪から何かが飛び出してきた。それは人知を超越した姿をしていたが、わたしの鼻先をかすめて藪に逃げ込み、理性を備えた人間の声で何度となく、あぶないところだった、とつぶやいた。わたしはその声に聞き覚えがあった。間違いなく彼の声だった。わたしは仲間を背後に残して藪に近づき、彼の名前で呼びかけた。彼はわたしの呼びかけにこたえて、正体を認めた。わたしが耳を傾けると、彼はかすれた声で話し始めた。魔道書の研究に傾倒したこと、神秘の呪文を突き止めたこと、その呪文を使ったこと、そのせいで肉体に異変が起こったこと、理性を失ったこと、失った理性がたまに戻ること、などを話していたような気がするが、しなければならないことがあったので、わたしはほとんど聞いていなかった。わたしは目配せをして仲間を呼び寄せ、藪に向かってショットガンの弾をあられのように撃ち込んだ。藪に入って調べると、そこではおぞましい怪物が死にかけていた。だが、どのようにおぞましかったのかをここであきらかにするつもりはない。わたしはさらに数発の弾を浴びせて、この怪物にとどめを刺した。

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