S1-E13
|
箱
|
工事現場のフェンスに裂け目があるのに子供たちが気がついた。習性として、裂け目があればそこにもぐり込まずにはいられない。子供たちは裂け目をくぐって工事現場に入っていった。週末なので森閑としている。あちらこちらにいろいろな物の山がある。砂利の山、セメントを詰めた袋の山、束になった鉄筋の山。子供たちは砂利の山に登って、山のうしろでそれを見つけた。スチール製の箱がある。正方形で、高さは子供たちとあまり変わらない。頑丈そうな枠がはまっていたが、表面は少し錆びていた。一人が蹴ると、ほかの子供も蹴り始めた。中からなにか、音が聞こえた。なにかが叫ぶような音が聞こえた。子供たちは顔を見合わせ、それから再び蹴り始めた。箱が動いた。軋むような音がした。それからものすごい音がして、箱の表面に突起が浮かんだ。またすごい音がして、突起の先に穴が開いた。なにかが中で叫んでいる。なにかが外に出ようとしている。子供たちは顔を見合わせ、それからそろって逃げ出した。
Copyright ©2014 Tetsuya Sato All rights reserved.
Copyright ©2014 Tetsuya Sato All rights reserved.