Le Caporal Epingle
1961年 フランス 105分
監督:ジャン・ルノワール
1940年。敗北によってフランス兵はドイツ軍の捕虜となり、休戦協定の締結後も解放されることのないまま、ドイツへ無料の労働力として送られる。そのなかの一人、伍長は監視のゆるい野外作業の最中を狙って脱走を試み、うまく列車に乗り込んでフランス国境まで到達するが、駅員の妨害に出会って失敗する。二か月の懲罰生活を送ったあとは身も心も疲れ果ててドイツ兵との馴れ合い生活に首まで浸るが、歯痛を感じたことから出会った歯医者の娘に心を励まされて再び脱走を決意する。今度は夜間にバラックの鍵をあけ、監視のドイツ兵を文字通り排除して(なにしろベッドを出口の扉に寄せて寝ているので)逃げ出そうと試みるが、その場で見つかって失敗する。伍長はまたしても懲罰生活を強いられるが、そうしているあいだに伍長を伍長、伍長と慕うハリー・ポッター似の善良な兵士は伍長が見ている前で無謀な選択をおこなって、一人でバラックを抜け出していく。そして伍長は目の前に現われた機会を逃さずにその場の判断で三度目の脱走に取りかかり、歯医者の娘の支援を受け、危険をくぐり抜けてついにパリに到着する。
残念ながらやる気を疑いたくなる駄作である。書き込みの甘い登場人物、浅薄で唐突な人物描写、ご都合主義の展開、といいところがあまりないのである。1961年の時点でうっかり作られた戦意高揚映画のように見える。ジャン・ピエール・カッセル扮するこの伍長はむら気なだけにしか見えないのに、なぜみんなにああも好かれるのか?
Tetsuya Sato