The League of Extraordinary Gentlemen
2003年 アメリカ・ドイツ・チェコ・イギリス 110分
監督: スティーブン・ノリントン
グラフィック・ノベルの映画化とのこと。20世紀前夜の世界を舞台にアラン・クォーターメインが超人集団を率いて世界征服を企む悪と戦う。で、その超人集団というのがネモ船長、ミナ・ハーカー、ドリアン・グレイ、ジキル博士(というよりもハイド氏)、透明人間、トム・ソーヤーということになっていて、ネモ船長が巨大なノーチラス号を率いればミナ・ハーカーは吸血鬼になってコウモリを率いて空を飛び、ドリアン・グレイは不死身の肉体でばったばったと敵を切るし、ジキル博士はハルクかビッグXかという感じで巨大なハイド氏に変身し、透明人間が長所を生かしてスパイをすればトム・ソーヤーは米国の密偵でスナイパーもするというような次第なのである。なお、善玉がこういう構成なので、悪玉の正体も当然そのようなことになっている。
で、ここまで目茶苦茶だと後はもうスピードで観客の目をくらますしかないとでも思ったのか、オープニング・タイトルが流れているあいだに霧のロンドンに怪戦車が出現して軍隊に守られたイングランド銀行が襲撃され、それから超人集団の集結ということになってアクションを取り混ぜながら登場人物を順次紹介していくのだけど、なにしろ数が多いので一通りの紹介が終わった後はもう戦う時間しか残されていない。中身と呼べるような中身はない。撮影がおもにチェコでおこなわれたから、というわけでもないだろうけれど、パースペクティブの処理にはどこかカレル・ゼーマン的な歪曲がほどこされていて妙に懐かしいような感じがした。でも、もしかしたら安普請なだけだったのかもしれないし、チェコつながりで考えると、この薄っぺらな映像と根本的な野暮ったさはカレル・ゼーマンではなくてオルドリッチ・リプスキーあたりに近いのではあるまいか。そしてオルドリッチ・リプスキーの作品と同様に、この映画も趣味的な居直りで作られていると考えるべきであろう。つまり、やりたいことをやるようにやるという姿勢は前向きに評価したいと思うし、観客もまた趣味的な居直りが可能であるとすれば(努力すればたいていのことは可能だが)、冒頭の銀行襲撃のくだり、どんな狭い運河でも平気でどんどん入っていくノーチラス号、そのノーチラス号の潜水部隊やファントム配下の甲冑軍団(火炎放射器を背負っている)といったあたりで評価の材料は提供されているということになる。まともな映画だとはまったく思わないが、まあ、ともあれ、わたしは嫌いではない。
Tetsuya Sato