Hannah Arendt
2012年 ドイツ/イスラエル/ルクセンブルグ/フランス 114分
監督:マルガレーテ・フォン・トロッタ
アイヒマン逮捕の報道に触れたハンナ・アーレントはエルサレムを訪れてアイヒマン裁判を傍聴し、その記録をニューヨーカー誌に連載してアイヒマンの官僚的凡庸さとユダヤ教指導者の対ナチ協力の可能性を指摘したところ、アイヒマンを擁護していると誤解され、猛烈な反発を受けて友人を失う。
アイヒマン裁判の場面はアーカイブからの引用で、そこに再現された法廷がつながっているところに空間的な違和感を感じたが、演出は誠実で、ハンナ・アーレントの経験と思考に明快に切り込んでいく。冒頭と最後にマンハッタンの昼景と夜景が置かれているところになにかしらの示唆を感じないでもない。60年代の亡命ドイツ知識人の風景は興味深いし、よく考慮されたダイアログがたのもしい。主演のバルバラ・スコヴァがきわめて見ごたえのある演技をしていて、その表情を追うだけでも最後まで目を離せない。
Tetsuya Sato