Lars and the Real Girl
2007年 アメリカ/カナダ 106分
監督:クレイグ・ギレスピー
ほとんどもうサウスパークではないかと思えるような寒そうな田舎町にラース・リンドストロムという27歳の青年が古ぼけたガレージで暮らしていて、非常に礼儀正しい一方で妙にひとを遠ざけようとする習性があって、同じ敷地の母屋のほうでラースの兄と暮らしている臨月の義姉カリンはラースの他人行儀な様子を気にかけてしきりと食事に誘ったり抱きしめたりというようなことをしていたが、ある日ラースのもとに大きな荷物が届けられて、それからラースが兄夫婦の前に現われて自分の部屋に遠方から来た女性の友人がいることを告げ、その友人ビアンカのさまざまな特徴を知らせた上でビアンカが兄夫婦の家で暮らせるようにしたいと頼み込むので兄夫婦のほうも断る理由はなく、むしろ孤独そうな弟にガールフレンドができたことを喜んで早速ビアンカを迎え入れるとこれが本物のラブドールで、ラースはこのラブドールに向かってかいがいしく世話をしたり話しかけたりするので、これは医者が必要だということになり、ビアンカの体調を口実にラースを地元のバーマン医師の前に送り、妄想性の疾患ではないか、ということでさしあたりはラースの行動にみなで調子をあわせることになり、それが次第に町全体へと波及していく。
町のひとが物静かな善人ばかりで、というところがとてもすてきで、そういう町だからみんなで調子をあわせていくとビアンカには勤め口が見つかり、病院ではボランティアをすることになり、いつの間にか学校で委員をしている、というあたりの徹底ぶりが最後まで持続するところがなかなかにすごい(呼吸停止状態のクマのぬいぐるみにちゃんと人工呼吸をするところもすごい)。
同じアイデアでも下手をすれば下品なコメディになるところだが、それを静謐のなかで淡々と進行する日常に埋め込んでいった脚本がすばらしい。忍耐強く作られた美しい映画で、ラースを演じたライアン・ゴズリングを中心に出演者は非常にいい仕事をしている。
Tetsuya Sato