2014年1月13日月曜日

4月の涙

4月の涙
Kasky
2008年 フィンランド/ドイツ/ギリシア 114分
監督:アク・ロウヒミエス

1918年、内戦下でのフィンランドで赤衛軍の女性兵士が白衛軍の捕虜となり、赤衛軍に劣らず民兵同然の白衛軍の兵士から凌辱を受けると畑に連れ出されて射殺されるが、たまたま生き延びた一人、ミーナ・マリーンは白衛軍の若い准士官アーロ・ハルユラによって救われ、捕虜の虐殺が無法であり、捕虜は裁判を受けるべきだと考えるアーロ・ハルユラは仲間に向かって思うところをそのままに主張し、ミーナ・マリーンに裁判を受けさせるために単独で護送に出たところ、乗っていた小舟がミーナ・マリーンの不審な挙動によって転覆し、孤島にたどり着いたアーロ・ハルユラとミーナ・マリーンはそこでしばらくのあいだ日を過ごし、たまたま通りかかった船に救われて本土に戻るとアーロ・ハルユラはミーナ・マリーンを白衛軍の判事エーミル・ハレンベルグのもとへ送り届けるが、判事であると同時に作家であり、自称人文主義者でもあり、かつて精神病院であった場所で優雅に日々を送りながら捕虜を処刑しているエーミル・ハレンベルグは島で何があったのかというおもにその一点に拘泥し、黙秘を続けるミーナ・マリーンを独房の壁の穴から監視し、ミーナ・マリーンの釈放を求めるアーロ・ハルユラにはなんというのか退廃的な罠を仕掛ける。
察するにエーミル・ハレンベルグは単細胞な暴力に倦み疲れていたのであろう。そして教育を受けて知的にふるまうアーロ・ハルユラに自分の劣情を隠すことができなかったのであろう。内戦のむごたらしさを背景に置いてはいるが、ねじれた恋愛映画というのが正体に近い。彩度を落とした絵と言葉数の少ない演出が効果を上げている。 


Tetsuya Sato