Pirates of the Caribbean: Curse of the Black Pearl
2003年 アメリカ 143分
監督:ゴア・ヴァビンスキー
ディズニーランドのアトラクション『カリブの海賊』を「原案」とする海賊映画。ちなみにポランスキーの『パイレーツ』も『カリブの海賊』にインスパイアされた映画だと監督本人がどこかで言っていたが、これはあれとはだいぶ違う。
ジャマイカ総督の娘エリザベス・スワンはカリブ海への航海の途中、洋上を漂う一人の少年を発見して命を救う。だが少年ウィリアム・タナーの胸には髑髏が刻まれた金のメダルがあり、少年に無用の嫌疑がかかるのを恐れたエリザベスはメダルを自分のものにする。それから8年後のポート・ロイヤル。エリザベスは美しく成長し、ウィリアム・タナーは鍛冶屋の徒弟となって仕事をこなし、同時に剣の腕も磨いていた。その日、砦では英国海軍正規艦長ノリントンの提督(戦隊指揮官?)への昇進式典がおこなわれることになっていたが、その直前、沈みかけたポートを捨てて港に上陸を果たした怪人があった。ジャック・スパロウ船長である。スパロウ船長は海賊の身でありながら単身ポート・ロイヤルの潜入し、英国海軍が誇る高速艦『インターセプター』を奪おうとする。船がないことには海賊が始まらないからである。この船を奪って一帯で略奪の限りを尽くすと宣言するスパロウ船長に見張りの英国海兵隊員が止めに入る。同じ頃、砦の上ではエリザベス・スワンがノリントン提督の求婚を受けていたが、当人はロンドン仕込のコルセットで窒息しかけて崖から海へ転落した。エリザベスの胸では髑髏のメダルが海に向かって鼓動を放つ。エリザベスは海底を目指して沈んでいったが、勇躍海に飛び込んだジャック・スパロウに救われた。だが船着場に這い上がってきたスパロウ船長を迎えたのはノリントン提督とその配下の兵士たちで、スパロウ船長は海賊行為の罪によってただちに牢屋にぶち込まれてしまう。そしてその晩、メダルの鼓動を聞きつけて沖から『ブラックパール』が姿を現わし、バルボッサ船長配下の海賊どもがポート・ロイヤルに襲いかかる。エリザベスとともにメダルが奪われ、鍛冶屋のウィリアム・タナーはスパロウ船長を自分の一存で解放し、『インターセプター』を奪って『ブラックパール』の後を追う。
ここまでの展開でもかなり凝ったチャンバラがあり、その後にももちろんチャンバラがあるし、簡単ながら操艦技術の競い合いようなこともやってくれるし、『インターセプター』と『ブラックパール』は舷を接して戦うし、『ブラックパール』はチェーンショットまで撃つのである。大砲で何を撃つとどうなる、という物理的リアリズムをきちんとやっている点で、すでに凡作『カットスロート・アイランド』(何が飛んできても考えなしに炎が吹き上がっていた)を大きく引き離している。加えて登場人物が素晴らしく魅力的であった。特にジョニー・デップ扮するジャック・スパロウ船長には文句のつけようがない。見た目にすでに怪しいし、嘘つきだし、嘘つきだと自認しているし、時々ほんとうのことを喋っているし、強いし、賢いし、それなのに馬鹿なのである。対するジェフリー・ラッシュのバルボッサ船長も実によかった。どことなく二流の悲哀を秘めながら、間抜けな部下を叱咤して目的完遂のために戦うのである。オルランド・ブルームの鍛冶屋もよく動いていたし、キーラ・ナイトレイの戦うお嬢様も好ましい。ジョナサン・プライスの総督というのも楽しかった。プロットは練りこまれているし、ダイアログも洗練されている。撮影は丁寧におこなわれていて無駄と思えるような部分がない。
Tetsuya Sato