Pirates of the Caribbean: At World's End
2007年 アメリカ 168分
監督:ゴア・ヴァビンスキー
東インド会社のベケット卿はデイヴィ・ジョーンズの心臓を手に入れて無敵の『ダッチマン』を手中に収め、海賊たちは対策を講じるために評議会の開催を決定する。バルボッサ船長ほかの一行は評議会に先立ち、ジャック・スパロウを取り戻すために世界の果てを示した海図を頼りにデイヴィ・ジョーンズの海を目指し、その海につらなる砂漠では故人となったジャック・スパロウがアホウの本領を発揮して『ブラックパール』でむなしい日々を送っている。バルボッサ船長ほかの一行はジャック・スパロウとの再開を果たしてこの世に戻り、そうると早速みんなで裏切りを始め、ついに始まった海賊たちの評議会では海賊的な妥協の末になぜかエリザベス・スワンが海賊たちの王となり、そこへ『ダッチマン』を先頭に東インド会社の大艦隊が現われる。
ある意味、雑音が身上のようなシリーズなので、背景はとにかくにぎやかにごちゃごちゃと描きこまれ、犬や猿を含む常連脇役にもていねいに光をあてていくので猛烈に忙しいことになっていて、3時間近い上映時間にもかかわらず、まったく休む暇がない。そのあわただしさに主役クラスも飲み込まれ、事実上の主役はジェフリー・ラッシュに移り、ジョニー・デップやオーランド・ブルーム、キーラ・ナイトレイは強い印象を残さない。もっともこれは、わたしがほかのところばかり見ていたせいなのかもしれない。つまり『ブラックパール』はさらにディテールアップされ、しかも今回は砂丘を乗り越えて進んでくる。『ダッチマン』との戦闘では双方に高低差があるという前代未聞の状況が出現し(なにしろメールストロムのなかで戦っている)、壮絶な片舷斉射で大砲や人間が次々に吹き飛び、斬り込みがあり、チェーンショットが再登場して絡み合った帆桁を吹き飛ばす。三層艦『エンデヴァー』もせっかく出てきたのだから、もう少し活躍してほしかった。あともうひとつ欲を言うと、ジョナサン・プライスにはもっと顔を出てほしかった。ついでにもうひとつ言うと、ベケット卿こそジョナサン・プライスにやってほしかった。このひとの悪役はすごいのである。
Tetsuya Sato