Oblivion
2013年 アメリカ 124分
監督:ジョセフ・コシンスキー
エイリアンが月を破壊したので地球は天変地異に襲われて都市が破壊され、人類はエイリアンとの戦争で核兵器を使ったので戦争には勝利を得たものの地球は居住不可能になり、生き残った人類の大半は土星の衛星タイタンに移住し、ジャック・ハーパーとヴェロニカの二人は地球に残ってエイリアンの生き残りによる攻撃から資源採集システムを守っていたが、そこへNASAの古い宇宙船が不時着し、不時着した宇宙船の唯一の生存者ジュリアはジャック・ハーパーを見てその名を口にし、宇宙船のタイムレコーダーを回収するために不時着現場に戻ったジャック・ハーパーとジュリアはそこでエイリアンの襲撃にあい、なぜか殺されずにエイリアンの拠点に運び込まれて、そこで意外な事実に遭遇する。
よく整理された古典的なプロットを無駄のない、よどみのない語り口にのせ、よく吟味された映像はただひたすらに美しく、そしてなぜか懐かしい。なぜ懐かしいのかが見ているあいだはわからなかったが、見終わったあとにあれやこれや考えた結果、これはどうやら1970年前後の、たとえば『猿の惑星』あたりに描かれていたような「荒廃した地球」の原風景の洗練された再現ということになるのかもしれない。そしてそこに主人公の郷愁と再会への熱望が心地よく結び合わされ、悲しみと癒しに満たされたハッピーエンドへとつながれていく。トム・クルーズは罪に包まれたキャラクターを好演し、オルガ・キュリレンコの姿はただひたすらに好ましく、モーガン・フリーマンは例によって説明するために登場するが、ダイアログはおおむねにおいて控えめで、にもかかわらず多義性を帯びながら作品の構築性へ確実に反映されていく。すでに脚本のレベルでもめったにない傑作ぶりだが、視覚的な豊かさもまた格別で、メカニックな描写にもはっきりとした個性が現われているので、主人公が乗り回す未来型ヘリコプターのまったく意味のないテイルローターまでが表現上のこだわりに見える。
Tetsuya Sato