2013年6月14日金曜日

ドラゴンヘッド

ドラゴンヘッド
2003年 日本 123分
監督:飯田譲二

修学旅行の高校生を乗せた新幹線がトンネルの中で事故を起こし、ほとんどの者が瞬時に死亡する。かろうじて生き残ったテルは闇の中でノブオと出会うが、ノブオはすでに心を狂わせていた。テルは暴れるノブオの前から逃れてアコと出会い、二人はノブオの攻撃から逃れて配水管の奥にもぐり、そこから外へ脱出する。だが外界は白い灰で覆われ、町は破壊し尽くされ、生きるものの影も見えない。ところがとある町までたどり着いたところで生き残りの住民の襲撃を受け、危うく殺されそうになったところを二人の自衛官に救われる。だが、この二人もどうやらおかしくなっていて、そのうちの一方が言うところによると、大規模な地殻変動のせいで地磁気が乱れて、人間はその影響を受けて精神状態が不安定になっているらしい。そう説明しながら暴れたりするのを残る一方が挑発し、危うい橋を渡りながら四人は住民を避けて脱出路を求め、途中、病院の地下で松果体を切除されて恐怖心を失った二人の子供を拾い上げ、車に乗り込んで町を離れる。その後も狂気の発作や恐怖の発作が人間を襲い、ぼろぼろになりながら東京を目指して進んでいくのである。
正体の怪しい原作をわかりやすい話にまとめているが、破滅的な状況は一般的な形で恐怖感を促すよりも、高校生の非力さを際立たせていた。だから要領が悪いだけに見えるのである。主役の二人は頑張っていたが、もしかしたら叫びすぎかもしれない。ふつうはどこかで観念して黙り込むと思うのだが、恐怖心や疲労感を演技の外側にかぶせているため、必要以上に転んだり躓いたり、あるいは泣き叫んだりしなければならなくなっているのであろう。無反応状態との対照があるとしても、情動の過剰は気になった。登場人物のほとんどが意味不明のことをしゃべっている、というのもちょっと困る。音楽の挿入を抑制して、もっとテンポを速くして、登場人物は不安を表面化させない程度に訓練された人間にして、あまり躓かないように、できれば背筋を伸ばして歩かせたら、もっといい映画になったのではないだろうか。VFXは全体に見ごたえがあり、美術も水準以上の仕上がりを見せている。


Tetsuya Sato