The Great Gatsby
2013年 オーストラリア/アメリカ 142分
監督:バズ・ラーマン
白状すると原作は未読、というかフィッツジェラルドは読んだことがないし、74年のロバート・レッドフォード版も興味がなくて見ていないし、内容だけを言うならばブレット・イーストン・エリスの『レス・ザン・ゼロ』とさして変わらない、というか『レス・ザン・ゼロ』がきわめて『グレート・ギャツビー』的なものだった、という発見があって、あるジェネレーションを無反省に題材にすることが本質的な脆弱さを抱えて絵空事以上のものにはならない、というのはつまり最初からそうだった、ということがわかって、これもまた発見と言えば発見ということになるのかもしれないけれど、この映画を見ているあいだ、わたしが頭に浮かべていたのはキャリー・ジョージ・フクナガの『ジェーン・エア』で、つまりよくよくくだらない原作をひとかど以上の映画にまとめた手腕にはとにかく感心しなければならない、ということになるのだろう。少々長いという欠点を除けばバズ・ラーマンは非常にいい仕事をしていて、パーティの場面は実にみごとに構成されているし、ギャツビーのデューセンバーグをはじめとして車の走りっぷりもみごとだし、3Dという表現が慎重に考慮された上で使われていて、3Dという表現形式をとおした1920年代初頭のジオラマ的再現はたいそうな見ごたえになっている。ピーター・ジャクソンの『キング・コング』がきわめてよくできた「30年代」映画だったとすれば、これはきわめてよくできた「20年代」映画ということになるだろう。レオナルド・ディカプリオによる「ギャツビー」の形態模写も非常によくできているし、キャリー・マリガンのデイジーもよく造形されているし、トビー・マグワイアは青春の迷妄を抱えてはまり役を演じている。そして結果としては表層だけがあって、裏があるようで全然ないという意味ではすぐれてバズ・ラーマン的であり、絵空事としての原作をよく反映して、傑出した人工物に仕上がっているという点で作家性の勝利がある。