Gold
1974年 イギリス 124分
監督:ピーター・ハント
南アフリカの金鉱で事故が起こり、鉱山の支配人が死亡する。後がまに選ばれたのは若くてハンサムなスレイターという名の男であったが、そうなったことには理由があって、義理の祖父から金鉱の経営を任されていたスタイナーは国際シンジケートと結託して鉱山に壊滅的な打撃を与えようとたくらんでいて、つまり陰謀が成功したあかつきには株式と金の価格操作で大もうけができると期待していたのであったが、そのためには何事も義理の祖父に相談するベテランではなくて、金に困っていて自分の言うこときく若いのが必要なのであった。というわけで支配人に選ばれたスレイターはスタイナーから与えられた誤りの情報にしたがって、水脈を目指して厚い岩盤を掘りはじめる。昼夜兼行で掘っていけば十日の後には岩盤を掘り抜き、金鉱は水浸しになって採掘不能になるはずであった。何も知らないスレイターは部下に危険な指示を与え、スタイナーはスレイターをうまくだましたつもりであったが、実はその頃、すでにスレイターはスタイナーの妻、つまり金鉱所有者の孫娘を寝取っていた。スタイナーは間もなく事実に気づき、暗い面持ちで密会の場から離れたりする。妻の心はすでに遠くにあって、しかもスタイナーはどうやら義理の祖父からも嫌われていた。山男ばかりの世界にあって、このスタイナーはどうやら学者の出で、一人だけ葉巻も煙草を吸わず、手洗いを励行し、いつも清潔なスーツに身を包んで地下には下りようとしないからであったが、いや、そんなに気に入らないならばなぜ婿に取ったのかと、見ているこちらは疑問に思うわけだけど、話の都合上、義理の祖父をひどい目にあわせようとたくらむような人物が婿に取られることになったらしい。
さてスタイナーは出張と偽って身を隠し、残されたスタイナーの妻はスレイターとともに愛の巣を目指してセスナ機で飛び立ち、そうすると舞台はアフリカなので眼下には草原が広がって様々な動物が現われる。エキゾチックな光景をバックに挿入歌が流れ、やがて愛する二人がバンガローに到着すると、スレイターの不在を狙って金鉱では事故が起こるのである。忠義に乏しいスレイターを金鉱から引き離しておこうという狡猾なスタイナーの罠であった。
というわけで金鉱では岩盤が撃ち抜かれて水があふれ、地下に一千人が取り残され、金の価格は暴落し、会社の株は投げ売りされ、南アフリカ政府も財政出動の検討に入り、しかも支配人はオーナーの孫娘とどこかへしけこんでしまって連絡が取れないという有様になり、老いたオーナーは途方に暮れ、その孫娘をもらったスタイナーは離れた崖の上から様子を眺めて楽しんでいる。あと4時間で金鉱は水没する。だがそのときセスナ機に乗ってスレイターが現われ、オーナーの孫娘の危険な操縦で遂に金鉱に到着する。実はスレイターは事故を見越して坑道に問題解決用の爆薬を仕掛けていて、そのことを知っていたスタイナーは配下を送って爆薬の導火線を切っていたが、そのことを知ったスレイターは勇敢な黒人の坑夫を連れて水没しかけた坑道へ進み、勇敢な黒人の坑夫を犠牲にして導火線を修復する。いや、本当に、出かけていって結ぶだけだからね。で、金鉱は救われたのであった。
007みたいなパニック映画を、という企画だったのだと思う。だから主役のスレイターはロジャー・ムーアで、雇われ者の分際で、というところは007と同じだが、民間人なので自腹を切って007のような生活を送っている。ほかのキャスティングもけっこう豪華で、鉱山オーナーがレイ・ミランド、孫娘がスザンナ・ヨーク、悪い亭主がブラッドフォード・ディルマンで、国際シンジケートの親玉がジョン・ギールグッド。鉱山のシーンは冒頭とクライマックスの二ケ所くらい、あとはもっぱらロジャー・ムーアとスザンナ・ヨークが禁じられた恋に身を浸していて、その合間にアパルトヘイトの問題を迂回しながら邪悪な陰謀が進行していくという筋書きである。というわけでほとんど取り柄のない映画だが、主題歌はかっこいい。
Tetsuya Sato