In Old Chicago
1937年 アメリカ 115分
監督:ヘンリー・キング
1854年、オレアリー一家は新天地シカゴを目指して幌馬車を進めていたが、途中、一家のあるじは幼い子供たちにそそのかされて列車と競争を始め、馬車から転落して最期を遂げる。一転して寡婦となったオレアリー夫人は子供たちを連れてシカゴに到着、生来の意地を張りながらも洗濯店を成功させ、長男はいまや弁護士となり、次男はあぶく銭を追い、三男は母親の洗濯店に勤めるドイツ娘と恋に落ちている。次男のダイオンは洗濯店に持ち込まれたシーツに町の有力者ウォーレンが書き残したメモを発見し、これは商売になると考えて直感にしたがい、ウォーレンが東部から呼び寄せた歌姫ベル・フォーセットを執拗に口説いて町いちばんの酒場を開き、一方、長男のジャックは唐突に現われた推薦人に囲まれて市長の候補に擁立され、対立候補ウォーレンと一騎打ちをすることになり、ウォーレンがダイオンの悪辣な選挙妨害によって敗北すると、ジャックが新たな市長となる。ということでダイオン・オレアリーは有力者ウォーレンを駆逐し、しかも自分の力で兄を市長にしたということで自分の権力を実感するが、新市長ジャック・オレアリーは公約どおりに町の浄化に取り掛かり、その標的に弟を選ぶので、ダイオン・オレアリーは兄に対抗してさらなる悪事をたくらみ、ところがそれが誰にも受けなかった、というあたりで1871年のシカゴの大火が発生し、火災は延焼に延焼を重ねて町を呑み込み、ガスタンクは爆発し、倉庫の油も爆発し、爆発に驚いた牛の大群は暴走を始め、町は阿鼻叫喚に包まれる。
異常なほどの快活さで悪事をおこなう次男がタイロン・パワー、まじめな長男がドン・アメチーである。タイロン・パワーの悪党ぶりがなかなかにすごいが、タイロン・パワーなのでなにをやっても悪役ではない、というところがものすごい。その代わりにウォーレン役のブライアン・ドンレヴィがたいして悪いこともやっていないのに悪役扱いされて分相応の最期を遂げたりする。話の展開はきわめて速いが、家族愛や兄弟愛、その和解までやろうと欲張ったところで、ややまとまりが悪くなっている。クライマックスの火災の場面はかなりの迫力があり、消防馬車のさまざまなバリエーションも登場する。
Tetsuya Sato