2013年3月17日日曜日

クラウド アトラス

クラウド アトラス
Cloud Atlas
2012年 ドイツ/アメリカ/香港/シンガーポール 172分
監督:ラナ・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー、トム・ティクヴァ

1849年の南太平洋で奴隷売買の契約を交わして母国へ戻るアダム・ユーイングは信頼するヘンリー・グース医師に命を狙われ、1930年代のイギリスでユーイングの航海日誌を読むロバート・フロビシャーは著名な作曲家ビビアン・エアズの採譜係となって自らも作曲を進め、その仕上がりを見たビビアン・エアズが所有権を主張するとロバート・フロビシャーはビビアン・エアズのルガーでビビアン・エアズを撃って逃亡し、1973年、スパイグラス誌の記者ルイサ・レイは火力発電業界が仕組んだ罠に気づいて命を狙われ、2012年、作家が評論家をビルのテラスから投げ落としたことでベストセラーを得た版元ティモシー・カベンディッシュは刑務所にぶち込まれた作家の兄弟から金をせがまれ、金策のために兄を頼ったところ、兄の姦計に落ちて監視の厳しい老人ホームに叩きこまれ、2144年のネオ・ソウルでは反政府勢力がいったいどういう文脈なのか複製人間のウェイトレスを仲間に引き入れ、文明崩壊後の世界では文明の痕跡を守るメロニムが外宇宙へ進出した人類に助けを求めるためにガイドに導かれて食人種が支配する森を越える。 
6つのエピソードは同期をとって並行して進んでいって、多少構成の苦労がうかがえはするものの、話は古めかしくて説教くさいだけで、いちおうコメディとして見ることができるティモシー・カベンディッシュ編を除くと面白いところは見当たらない。そのままであればとてもではないが見ていられない映画だが、トム・ハンクス、ハル・ベリー、ヒューゴ・ウィーヴィング、ヒュー・グラントなどの出演者が場面ごとに異なる役で異なるメイクで登場してきて、無理矢理一重まぶたにすれば誰でもアジア人になるだろうという乱暴さには少々困惑したものの、なにやら俳優が楽しそうに仕事をしていて、この役の中身は誰なんだろう、とあれこれ想像しながら時間をつぶすことができるのは大きな救いになっている。ただ、それがこの映画の主眼なのか、それとも主眼は説教くさくてばかばかしいテーマのほうにあるのか、さっぱりわからないのはやはり難点と言うべきであろう。 似たような趣向であれば『イントレランス』のほうが面白い。


Tetsuya Sato