You Don't Mess with the Zohan
2008年 アメリカ 113分
監督:デニス・デューガン
ゾーハンはイスラエル軍の対テロリスト専門兵士で、ビーチでは無敵、敵地でも無敵(至近距離で発射されたデザートイーグルの弾丸を素手で止める)であったが、夢はアメリカに渡ってヘアスタイリストになることで、パレスチナのテロリスト、ファントムとの死闘の際に自分の死を演出し、中東を離れてアメリカに渡り、ニューヨークでヘアスタイリストの職を探すが、常識がない上に流行から20年も遅れているし、まったくの未経験ということでことごとく断られ、イスラエル/パレスチナ街にあるパレスチナ系の美容室でようやく下働きの職にありつき、間もなく客のカットをする機会を得ると、とても説明できないような独特の趣向が大好評で、下町の小さな店に行列ができ、美人の店長も大喜び、というめでたい展開になるものの、イスラエル/パレスチナ街を地上げして巨大モールを作ろうとたくらむ不動産屋の陰謀が現われ、その不動産屋に雇われた過激な白人至上主義者の一団も現われ、ゾーハン生存の知らせを聞いたファントム(ゾーハンを殺したことでパレスチナの英雄となり、ファーストフードで成功してチェーン店を200も持ち、20人の妻と同衾している)もゾーハンを殺すためにニューヨークにやって来る。
イスラエル/パレスチナの和解をアメリカ/イスラエル寄りからアプローチし、イスラエル/パレスチナを区別しない(どちらも同じように間抜けで図々しい)という見方によってはきわめて微妙な立ち位置にあるが、前向きな態度は好ましい。主演のアダム・サンドラーが製作、脚本にも加わり、主人公ゾーハンのキャラクターが実に丹念に造形され、周辺の中東系キャラクターもよく考慮され、微妙な戯画化が加えられた生活描写が面白く、ヒズボラの電話サービスは素朴に笑える(ただいま停戦交渉中のため、テロ派遣サービスは中止しております)。しかし、なぜあれほどに動物をいじめなければならないのか(これも度を越しているので、唖然としながら笑っていたが)。決して出来のいい映画ではないけれど、とにかく陽性でにぎやかで、無条件に元気なところは買いであろう。マライア・キャリーが本人役で顔を出し、ジョージ・タケイも一瞬、顔を見せる。
Tetsuya Sato