Sucker Punch
2011年 アメリカ/カナダ 110分
監督:ザック・スナイダー
財産を狙う継父によって精神病院へ送られた少女は継父の陰謀によってロボトミー手術を受ける運命となるが、運命から逃れるために四人の少女と協力して脱出を計画し、脱出に必要なアイテムを得るために空想のなかで戦いを演じる。
基底にあるのが精神病院で、その風景を継承した形で売春宿が出現し、脱出を計画する少女たちはそこで患者から踊り子へと変身を遂げ、敵の目をあざむくための踊りがそれぞれ空想的なステージにつながっていく。空想の世界では鎧武者が現われて剣を振り、ミニガンを乱射し、第一次大戦を背景にドイツの航空機が爆撃を加え、死からよみがえった兵士たちがガスマスク姿で塹壕を埋め、あるいはファンタジックな古城が怪物で満たされ、その上空をB-25とドラゴンが飛び、疾走する未来の列車で銀色に輝くロボットが武器を手にして爆弾を守る。そのあたりの描写はおおむねにおいて精緻ではあるものの、文脈を欠いているだけに軽さが目立ち、どれほど精緻であっても記号以上の意味にならない。そこで戦う少女たちの動作はそれなりに洗練されたものとなっているが、これも文脈を欠いているので軽さが目立ち、そのせいで単調にすら見えてくる。とはいえ、最大の難点は空想の世界がいちいち踊りと直結しているところで、そこだけに妙な脈絡がついているせいで、空想が空想として広がらない。基底にある単純さとそこに同居している宿命的な重さと宿命から逃れる行為の軽さとが混然と同居してバランスを得るに至っていない。つまり視覚的にどうこう、という以前に構築の粗が目立つのである。
Tetsuya Sato